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大阪地方裁判所 平成5年(ワ)4983号 判決 1998年3月26日

大阪市中央区谷町六丁目九番一八号

原告

株式会社村田商会

右代表者代表取締役

村田保春

右訴訟代理人弁護士

小西敏雄

右補佐人弁理士

石田俊男

大阪府東大阪市西岩田三丁目三番一三-九二三号

被告

サンロジックこと

大西哲夫

右訴訟代理人弁護士

阪口春男

今川忠

森澤武雄

岩井泉

平野和宏

原戸稲男

主文

一  原告の著作権に基づく差止め及び廃棄請求を棄却する。

二  被告は原告に対し、金五八三万八〇〇〇円及びこれに対する平成五年六月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の金員請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを一〇分し、その九を原告の、その余を被告の各負担とする。

五  この判決の第二項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は、別紙被告設計図目録1ないし13記載の各設計図を複製してはならない。

二  被告は、前項の各設計図を廃棄せよ。

三  被告は原告に対し、金四〇〇〇万円及びこれに対する平成五年六月一一日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  仮執行の宣言

第二  事案の概要

本件は、FRP製コンベヤベルトカバー等の製造販売を業とする株式会社である原告が、その作成した別紙原告設計図目録1ないし7記載のコンベヤベルトカバー、サイドカバー及びこれらの取付用部品(アングル、ブラケット、Uクリップ、Uクリップ用チェイン付ストップピン)の各設計図(以下、「原告設計図1」「原告設計図2」…といい、これらを含め原告作成の設計図を合わせて「原告設計図」と総称する)は著作権法一〇条一項六号所定の図形の著作物であって原告がその著作権を有するところ、原告の元従業員である被告が作成し、顧客にそのコピーを配布している被告設計図目録1ないし13記載の各設計図(以下、「被告設計図1」「被告設計図2」…といい、これらを含め被告作成の設計図を合わせて「被告設計図」と総称する)は、原告設計図を複製したものであって、原告の有する右著作権(複製権)を侵害するものであると主張して、著作権法一一二条一項、二項に基づき、被告設計図の複製の差止め及びその廃棄を求めるとともに、被告が右著作権を侵害し、原告在職中に原告の営業秘密である原告設計図、得意先名簿等を持ち出してこれらを使用し、不正な競業行為を行つたなどの不法行為に基づく損害賠償として、被告のコンベヤベルトカバーの販売により喪失した得べかりし利益相当額等の損害の賠償を求めた事案である。

なお、原告は、本件訴訟に先立ち、被告を債務者として仮処分を申し立て(大阪地方裁判所平成三年(ヨ)第三七八一号)、平成五年法律第四七号による改正前の不正競争防止法一条三項柱書、一号又は四号に基づく営業秘密に係る不正競争の差止請求権及び民法七〇九条に基づく差止請求権を被保全権利として、被告製品の製造販売の差止めを求めるとともに、著作権法一一二条一項、二項に基づく差止請求権を被保全権利として、被告設計図1ないし7の複製の差止め及び廃棄を求めたところ、大阪地方裁判所は原告の仮処分申立てをすべて却下したが、その即時抗告審である大阪高等裁判所(平成四年(ラ)第四五一号)は、不正競争防止法及び民法七〇九条に基づく仮処分申立てについては却下の原決定を維持したものの、著作権法に基づく仮処分申立てについては却下の原決定を取り消し、これを認める決定をした(甲一七。以下「先行仮処分事件」という)。

一  基礎となる事実(いずれも争いがない)

1  当事者

(一) 原告は、油圧用高圧ホース及び空圧用チューブ等関連商品、FRP製コンベヤベルトカバー、搬送用ベルト、ゴム系常温加硫剤、各種ゴム、プラスチック切削・打抜加工品、空調用フィルター、ウレタンゴム製品等の製造販売を目的とする株式会社である。

(二) 被告は、昭和五一年三月原告に入社し、以後FRP製コンベヤベルトカバー専任の営業担当者として勤務し、平成二年八月二〇日原告を退職し、その後「サンロジック」の名称でFRP製コンベヤペルトカバーの製造販売を開始し、現在に至っている。

2  コンベヤベルトカバーの概要

(一) FRP製コンベヤベルトカバー

コンベヤベルトカバーは、石炭、石灰岩、土砂等を搬送するベルトコンベヤ装置に対し、塵芥の飛散、運送物の落下、あるいは騒音を防止する目的で設置されるカバーである。その材料であるFRPとは、Fiber Reinfo rced Plastics(繊維強化プラスチック)の略称であり、繊維としてグラスファイバーマットを用い、これに着色剤や硬化剤を混入した不飽和ポリエステル樹脂を塗布し、脱泡し、これを所定の枚数に積層して自然硬化させたものであって、軽くて強く、耐候性に優れ長期間の使用に耐えるという特徴を有する。

(二) コンベヤベルトカバーの種類

原告が製造、販売しているFRP製コンベヤベルトカバーには、丸カバーとサイドカバーの二種類があり、丸カバーは、その形状により「MLC型」「MMC型」「MT型」の三種類がある(以下、原告の製造、販売する丸カバー、サイドカバー及びその取付用部品を総称して「原告製品」という。なお、被告の製造、販売する丸カバー、サイドカバー及びその取付用部品を総称して「被告製品」という)。また、原告の丸カバーの寸法は、設置するベルトコンベヤ装置のJIS規格のベルト幅に応じて多種あり、色は一三色である。

(三) 丸カバーの製造方法等

丸カバーの製造工程は、以下のとおりである。まず「木型A」を作り、それにガラスマットを成型し、樹脂を塗布して硬化させて「金型B」を作る(これを「元モールド」又は「マスター製作用モールド」という。製品製作用にも使用可能である)。その元モールドにガラスマットを成型し、樹脂を塗布して硬化させて「金型C」を作る(これを「マスター」という)。次に、マスターにガラスマットを成型し、樹脂を塗布して硬化させて「金型D」を作る(これを「モールド」、「製品製作用モールド」又は「成形型」という)。モールドにガラスマットを成型し、樹脂を塗布して硬化させ製品を作る。

丸カバーは、単品をコンベヤベルトの長さ方向にいくつも並べて使用する関係上、隣同士のカバーが境界部で重なることになるが、原告の丸カバーでは、その際上になるものと下になるものの二種類を区別するためにそれぞれ上又は下方向の矢印が付されている。

二  争点

1(一)  原告設計図は、図形の著作物に該当するか。

(二)  被告設計図は、原告設計図を複製したものであるか。

2  被告の行為は不法行為を構成するか。

3  被告に損害賠償義務があるとした場合に、原告に賠償すべき損害の額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(原告設計図は、図形の著作物に該当するか)について

【原告の主張】

原告設計図は、いずれも原告が原告製品の製造販売を開始するに際し、原告の発意に基づき、原告の設計業務担当者においてその長年にわたる職務上の感覚、経験と技術的知見を駆使して試行錯誤の後独自に創作したもので、機械工学上の技術的思想を表現した面を有し、かつ、その表現内容(その形状及び寸法)に創作性のあるものであるから、著作権法一〇条一項六号所定の図形の著作物に該当し、原告がその著作者であり、著作権者である。

1(一) 原告の丸カバーの設計図は、原告製品の形状・寸法、表現方法において、次の点で他社の設計図と異なる特徴を有している。

(1) 作図方法

他社の丸カバーの設計図は、三角法で作図され、側面図は一枚だけで上下カバーが共用となっているのに対し、原告の丸カバーの設計図は、一枚の用紙に断面を中心に書き、その左右に上カバーと下カバーを配置し、左下側にリブのラップ部詳細図を書いた、三角法でない変則的な作図方法を採っている。

(2) フランジからの立ち上がり

フランジから垂直に立ち上げ、R2とR1の二つの円弧を接線で結ぶ作図方法は、原告独自のものである。

(3) アジャスト代

下カバーの耳リブに対し上カバーの耳リブを大きく広くし、スムーズなラップとカバーの収縮を吸収するアジャスト代を設ける等の他社にない原告の独自性を出している。

(4) ラップ部詳細図

他社の四枚の図面では、上下カバーが共用であるので、当然、耳リブの寸法が上下カバーとも同じであり、したがって、同じ寸法の耳リブをラップさせることがスムーズにできないのはもちろん、長年月の使用中に発生する収縮等の寸法変更に対応できない。

(5) リブの本数

原告のMLC型の場合、脱泡及び成型作業がスムーズにでき、期待強度が確保できるようにリブの本数を四本に設定してある。他社の場合、リブは五ないし七本と多く、リブが三本連続しているものもあり、脱泡及び成型作業がスムーズに行きにくい。

(6) 取付方法別の図面

原告の丸カバーの取付方法は、A型(両開き式)、B型(密閉脱着式)、C型(片開き式)の三種類があり、同一サイズで三枚の図面を作成してあるのに対し、他社の図面では両開き式の一種類しかない。

(二) 原告のサイドカバーの設計図は、右(一)の原告の丸カバーの特徴の外に、次の特徴を有する。

(1) ラップ部

主としてスレート式のラップ方法を採用して、若干のアジャストも可能となるようにされている。

(2) 中間リブの位置

耳部から一六五mmと三三五mmの位置に四本のリブを配置して剛性と補強効果を与え、中央部は広くとって、点検窓が取付可能にしてある。

(3) ハンドル・フックの位置

ハンドルは、両手で容易に着脱ができるように中間リブの間に配置し、フックはその下側に取り付けてある。

2(一) 被告は、原告設計図はもっぱら原告製品を大量生産するために、すなわち産業用に利用することを目的として作成されたものであるなどと主張して、その著作物性を否定するが、現在の原告製品FRP製コンベヤベルトカバーが開発されるについては、原材料に何を用いるか、その加工方法をどうするか、カバーの断面形状をどのようなものとするか、リブの形状をどうするか、フランジ部分をどうするかなどの課題があり、それらの課題が解決されてようやく原告製品FRP製コンベヤベルトカバーが完成したのであって(甲六九)、それらの課題の解決は、技術的思想の創作すなわち発明、考案によってなし遂げられたものである。そして、個々具体的なコンベヤベルトカバー一個の全体の形状、寸法を図面に表現したものが各コンベヤベルトカバーの設計図であり、それらの個々具体的な取付用部品の形状、寸法を図面に表現したものが各取付用部品の設計図であって、それらは、前記のとおり原告の設計業務担当者らにおいてその長年にわたる職務上の感覚、経験と技術的知見を駆使して試行錯誤の後独自に創作したものであるから、機械工学上の技術的思想を表現した面を有するのである。

特許、実用新案は、いずれも技術的思想を保護の対象としており、特許は課題を解決した技術的思想を体現した物と方法について、実用新案は課題を解決した技術的思想を体現した物品の形状、構造、組合せについて、それぞれ明細書の請求の範囲の記載により保護するものであるのに対し、著作権は、設計思想を保護の対象としており、設計図という面において、物の形状、寸法という表現形式により保護するものである。

工作機械の設計図の著作物性が争われた事件において、その設計図が機械工学上の技術的思想を表現した面を有するから学術的な性質を有する図面の著作物(著作権法一〇条一項六号)に当たるとした裁判例がある(大阪地裁平成四年四月三〇日判決・判例時報一四三六号一〇四頁)。

(二) 被告は、コンベヤベルトカバーの設計図の表現形式についてはほとんど選択の余地がない旨主張するが、ベルトコンベヤにJIS規格はあっても、JIS規格のないもの(キャリヤローラ台の全幅)や許容差の問題もあり、更には立上りやR、リブの位置をどうするか、積層数につきどこをどうするかなどについて、各社それぞれの創意工夫があり、製品も各社異なるのである。

【被告の主張】

以下のとおり、原告設計図は、いずれも著作権法一〇条一項六号所定の図形の著作物に該当しない。

1 原告設計図は、もっぱら原告製品を大量生産するために、すなわち産業用に利用することを目的として作成されたものであり、現に原告は、原告設計図を承認図面などとして使用し、原告製品を大量に製造、販売しているのであるから、いずれも文芸、学術、美術又は音楽の範囲(著作権法二条一項一号)に属さず、著作権法にいう著作物に当たらない。

2 また、著作物として保護されるのは、技術的思想そのものの創作性、独創性ではなく、表現形式自体の創作性、独創性である。技術的思想そのものの創作性、独創性は、特許庁における一定の審査を経て付与される特許権等の工業所有権として著作権とは別に保護されるべきものである。

原告設計図は、その性質上、主として点又は線を用い、これに当業者間で共通に使用されている記号、数値等を付加して二次元的に表現したものであり、具体的には、各部位の縦・横・厚み・円の直径・円の位置を点及び線に数値及び記号を付加して表現したものにすぎないところ、以下のとおり、ベルトコンベヤ自体がJIS規格に基づいて製造される規格製品であることやコンベヤベルトカバー及びその部品の構造自体が極めて単純なものであることなどから、その設計図の表現形式についてはほとんど選択の余地がなく、このような表現形式はどのような設計図でも見られるものであるから、独創性など何もない。

(一) ベルトコンベヤは、JIS規格に基づき製造される規格製品であり、ベルト幅、本体の幅等の寸法が既に決まっている(乙七)。

丸カバーは、ベルトコンベヤで輸送される物を覆うためのものであるから、当然、ベルトコンベヤ本体及び輸送物を覆うような形状をしている必要がある。その結果、丸カバーは、次の各要件を満たすように製造されなければならない。

(1) 幅が、ベルトコンベヤ本体のキャリヤベッドの取付穴の幅より若干長いこと。

(2) ベルトコンベヤ本体のキャリヤローラーの幅及び高さをカバーする構造になっていること。

(3) ベルトコンベヤで輸送する物が通過できるだけの高さを有すること。

(二) 以上の点をふまえて、各社の丸カバーの寸法、形状を比較すると次のとおりである。

(1) 寸法

末尾添付の「各メーカー寸法比較表」記載の各メーカーのパンフレットに記載してある図面に基づき、丸カバーの幅、高さ及び長さにつき、製品の種類毎に比較すると、同比較表記載のとおりであり、メーカー間の違いは微差の範囲内であってこの違いによって際立った特殊性が生じるわけでない。

(2) 形状

その形状は、いずれも断面が丸みを帯びた山形で、リブを有する構造(例えば、東海ゴム工業株式会社の製品はリブを二本又は四本〔乙五の5〕、スターライト工業株式会社の製品は中央部に太いリブと両側にそれぞれ三本のリブ〔乙五の2〕、吉野ゴム工業株式会社の製品は原告と同様のリブ部〔乙五の4〕を有する)であり、その結果類似した形状(特に断面)となっている。

(三) サイドカバーの設計図についても、基本的に丸カバーの設計図と同様のことがいえる。すなわち、サイドカバーは、丸カバーの下の両側面に設置され、運搬物を運び終えたコンベヤベルトが元へ戻る際に、運搬物の残り等が側面から飛び散ったりするのを防止するためのものであるが、既に存在するベルトコンベヤの高さなどに合わせて製造されるものであるから、自ずとその寸法、形状は決まってくるのであり、その用途との関係上、平板な長方形の板にリブがついているという極めて単純な形態・構造にならざるをえず、丸カバーよりも更に単純なものであって、その形態・構造上、独創性の入る余地はない。

(四) また、原告の丸カバーの設計図は、いずれも側面図、断面図及びリブ部分の拡大断面図からなり、各図に各部分の寸法が記載されているにすぎない。この表現方法は、株式会社ブリヂストンの製品の図面(乙一二)、スターライト工業株式会社の製品の図面(乙五の1)及び三ツ星キヤデラックプラスチック株式会社の製品の図面(乙一五の2)の各表現方法と全く同じである。

寸法の表現方法も、直線部分の寸法については、各部分から補助線を引き補助線間を矢印のついた直線で結び、その直線に沿って寸法を記入し、曲線の寸法については、半径(R)を利用した寸法の表現方法を採っており、取付窓を側面図の中に書き込んでいる点で全く同じである。

(五) このように、コンベヤベルトカバーにおいては、複雑な構造を有する精密機械等と異なりその構造が極めて単純であること、ベルトコンベヤ自体がJIS規格に基づいた規格品であることなどから、各社の図面の表現形式はその主要部分において同一のものとならざるをえないのである。

なお、原告の丸カバーの設計図では、上カバーと下カバーが一枚の図面上で表現されているのに対し、他社の設計図では、上カバーと下カバーが一枚の図面に表現されていないが、これは他社の製品は上カバーと下カバーが同一のものであり、そのような表現方法を用いる必要がないからにす ぎない。寸法、形状の類似した二つの製品を一枚の設計図上に表現するという表現方法自体は、ごくありふれたものであって、例えば照明器具のスイッチカバー(乙六の1)やセード(傘。乙六の2)の設計図でも採用されている。

3 仮に、技術的思想そのものの創作性、独創性が著作権法により保護されるとしても、原告設計図の表現内容(その形状及び寸法)には創作性がない。

すなわち、図面が著作物として保護されるためには、当該図面が技術的思想を表現した面を有し、かつ、その表現内容(描かれた形状及び寸法)に創作性のあることが必要であるところ、これが認められるのは、例えば建築物や精密機械などのように「描かれた形状及び寸法」に創作性(技術的思想の独創性)を発揮できる場合に限られることは当然である。

コンベヤベルトカバーは、前記2(一)及び(三)記載の理由により、その形状及び寸法が形式的に決まることになり、更に取付用部品も含め構造が極めて単純であることを考慮すると、誰が描いてもよく似た図面しか描けないのであって、原告設計図に「描かれた形状及び寸法」に創作性を発揮する余地はない。

二  争点2(被告設計図は、原告設計図を複製したものであるか)について

【原告の主張】

被告設計図は、これに対応する原告設計図と全く同一であるか、一部の修正はある心のの、原告設計図と同一性があり、原告設計図に依拠して作成したものであるから、原告設計図につき原告の有する著作権(複製権)を侵害するものである。被告は、顧客との取引を進めるに当たり承認図面として、下請メーカーが被告製品を製造する基本として、あるいは、木型製作に当たり用いるものとして、被告設計図を作成して顧客や下請メーカー等に交付してきたが、今後も営業のためこれを継続するであろうことは明らかである。

1 被告設計図1ないし7は、それぞれ原告設計図1ないし7と全く同一ではなく、一部の修正はあるものの、原告設計図と同一性があり、これに依拠して作成したものである。

2 被告設計図8は、先行仮処分事件の大阪高等裁判所における審尋の際、被告が自ら原告設計図をコピーしたものを所持することを認め、これを一覧表の形で提出したメモに記載されたものであり(甲一六の添付資料)、原告設計図と全く同一である。

被告設計図9(丸カバーST型、ケーブルラックカバー及び特殊サイドカバーの各設計図)及び被告設計図10(SKC-九〇〇B-NU)は、被告が顧客に承認用図面として提出しているものであり、原告設計図と全く同一ではないが、ごく一部の形状と寸法が異なるだけで、その相違点は表現全体の中では極めて微細な部分にとどまり、原図たる原告設計図と異なる設計思想が表現されているわけではなく、原告設計図との同一性を損なうものではない。なお、ケーブルラックカバーの設計図は、形状、寸法が全く同一であり、丸カバーSTの設計図は、形状が全く同じで、寸法が一部異なるだけである。

3 被告は、被告設計図11(丸カバー、特殊サイドカバー及びヒンジ用ピンの各設計図)を平成六年三月一六日から同月二三日にかけて、取引交渉のためその顧客に対しファックス送信した。

(一) 被告のヒンジ用ピンSP-1008の設計図は、原告のヒンジ用ピンSPC5-016の設計図を真似て作成されたもので、同一性が認められる。

(二) 被告の丸カバーSFC-1800A-U、SFC-1800A-Dの設計図は、原告のMLC1600AとMT1800-1000-Aの設計図を真似て作成された、両設計図からの合成図面であって、同一性が認められる。

(三) 被告の丸カバーSFC11600A-U、SFC-1600A-Dの設計図は、原告のMLC1600AとMT1600Aの設計図を真似て作成された、両設計図からの合成図面であり、同一性が認められる。

(四) 被告の特殊サイドカバーSDF-0882Aの設計図は、原告のサイドカバーMFC-63-882・572の設計図を真似て作成されたものであり、同一性が認められる。

4 被告は、平成六年七月末頃、原告被告共通の顧客に対し、見積り用の参考図として、被告設計図12のうちSSC-1200Aを除く次の七枚の設計図を複製して交付したが、それぞれ対応する原告設計図を複製したものである。

(一) 被告の丸カバーSKC-1200B上カバー(平成五年三月二〇日検図)…原告のMLC1200Bに対応

図面の配置が一部異なり、また被告設計図では一部寸法の表示がないところがある点及びフランジの厚みの表示につき原告設計図では「3」とされているところが被告設計図では「3P」とされている点が相違しているのみで、両者の形状、寸法は同一である。

(二) 被告の丸カバーSKC-1200B下カバー(平成五年三月二〇日検図)…原告のMLC1200Bに対応 被告設計図は、下カバーのみを表示しているので、原告設計図の下カバー部分と比較すると、形状、寸法が同一である。

(三) 被告の丸カバーSFC1200B(平成四年七月一三日検図)…原告のMT1200B、MLC1200Bに対応

被告設計図は、原告設計図MT1200Bと比較して腰の高さ寸法(六〇↓一〇〇)、中間リブの間隔(三三五↓三三〇)及び天井の形状が相違しているだけであり、ラップ詳細図については、原告設計図MLC1200Bのラップ詳細図と同一である。

(四) 被告の丸カバーSPCO204(平成二年一二月二〇日検図)…原告のMKC1906-1に対応

側面図において長さが少し異なる点(八〇五↓七八二)、ラップ詳細図においてアジャスト代を大きくし、下カバーを天頂部で切断してある点、正面図において幅が異なる点(六〇〇↓六五〇)を除き、両者の形状、寸法は同じであり、特に、本件における特徴である正面図における独特の形状は全く同じである。

(五) 被告の特殊サイドカバーSF816AB(平成三年九月二三日検図)及びSF816AC(平成三年九月二三日検図)…いずれも原告のMFC-63-721に対応

リブの長さ寸法が異なる点(六〇〇↓五五〇)を除き、両者は形状が同じであり、リブの幅寸法及び「注」の記載も同じである。

(六) 被告のUクリップD3-0070A(平成二年一〇月七日検図)…原告のD3-0027-705-8に対応

角度(七〇↓七五)と長さ(七〇↓七一、六三↓六四)において僅かに相違するだけで、他の形状、寸法は全く同じである。

5 被告は、被告設計図13を所有し、これを平成六年一一月以前にその顧客に取引交渉のため複製して交付した。

【被告の主張】

1 原告の主張は争う。

被告設計図1、2、4ないし7は、先行仮処分事件における大阪高等裁判所の決定後、被告から原告代理人に返還したので、被告は現在所持していない。被告設計図8は、すべて廃棄したので、被告は現在所持していない。

2 被告設計図10(SKC-九〇〇B-NU)は、これと対応する原告設計図MLC-九〇〇B-六二二(別紙「原告設計図と被告設計図の対比表」の原告番号欄8)とは、断面図のR部分の寸法・形状、リブとリブとの間隔、点検窓の大きさ及び取付方法、カバーの幅、リブの下部までのカバーの高さ等の点で、全く異なるものである(甲三四、乙一六)。

三  争点2(被告の行為は不法行為を構成するか)について

【原告の主張】

被告は、次の1ないし5の行為を行ったが、これらの行為は、民法七〇九条の不法行為を構成する。

1(一) 被告は、原告の営業課長の職にあつた平成二年五月頃から退職する同年八月二〇日頃までの問に、原告が秘密としている原告設計図、得意先名簿、仕入先名簿をコピーし、また、原告固有のカラーサンプルそのものを持ち出して、原告設計図の著作権を侵害しただけでなく、これら原告の営業秘密を取得した。

原告設計図は、承認図面として、また木型発注用図面、製品の製作図面として使用するものであり、原告製品の製造販売に必要欠くべからざるものであって、原告の長年にわたって蓄積されたノウハウの結晶である。

被告は、先行仮処分事件の大阪高等裁判所の決定後、五八枚の被告設計図を廃棄のため原告に手渡し、また、原告と新川レジン工業株式会社(以下「新川レジン工業」という)との間の和解調書において、新川レジン工業は被告に九二枚の被告設計図を返還したとされていることなどから明らかなように、原告設計図を大量にコピーして持ち出したのである。

(二) 被告は、原告設計図は被告が原告に在職中、顧客に説明するための営業用資料・設計打合せ用資料として常時社外に携行していたものであるが、持出しのための社内手続は一切なかったし、図面を保管していたキャビネットは鍵のかからない鉄製のものであり、誰でも自由に取り出せる状態にあったと主張する。しかし、原告設計図の保管庫の管理責任者は原告代表者村田保春(以下「村田社長」という)で、出図は村田社長、谷出仲祐及び被告の三名のみに限定し、他の従業員に対しては持出し厳禁を指示徹底していたし、図面保管庫の鍵二個は、村田社長と正式の取締役ではないが「専務」と呼ばれていた熊本義一(以下「熊本専務」という)が一個ずつ保管し、谷出又は被告の申出により開錠し、用済み後は直ちに返却するよう義務づけ、実行していた。図面保管庫として使用していたキャビネットは、鍵がかからないというようなトラブルは現在まで一切ない。このように、原告は、図面保管庫及び図面の持出しについては十分に管理してきたのであるが、被告は、業務にかこつけて計画的に原告設計図を持ち出したのである。

被告は、顧客からの要望により、原告設計図が顧客の下に留め置かれることも珍しくなかったが、その際、原告が顧客に対し原告設計図を秘密扱いにするよう要請したこともないし、そもそも承認返却図として使用される場合は別として、留め置かれた原告設計図が回収されることさえなかったと主張する。しかし、顧客に提出した承認図面は、例えば五部提出すれば、 一部が返却用として発注先(原告)に返却され、残り四部が提出先の設計、工程、資材、検査の部門で保管されるのであるが、これらの承認図面については、秘密事項として取引基本契約書によって取引の双方当事者に守秘義務が課されていた。

被告は、コンベヤベルトカバーの設計図等に記載された寸法、形状は既にカタログ、市販製品などにより開示されていることや、原告設計図の実際の利用方法から考えて、製品を製造する際に技術的に必要不可欠なものではなく、すなわち、原告設計図は、設計図本来の機能を有しておらず、技術的に価値のないものであるなどと主張するが、カタログに記載されている寸法は、設計図に記載されている寸法のごく一部にすぎない。コンベヤベルトカバーを作るには、まず木型を作るのであるが、木型は設計図により作るのであり、カタログによっては作れない。次に、商取引上承認図面が要求され、これにより、契約の対象が確定され、また品質保証の義務を負うことになるのであり、下請のメーカーも、設計図を基本として木型から作られた型類により製品を製造するのである。後記5の新川レジン工業も、被告から手渡された設計図を多数保有していて、これに依拠して被告からの指図に基づき被告製品を製造していたのである。

被告は、平成二年七月当時は未だ得意先名簿、仕入先名簿は完成しておらず、パソコンからプリントアウトされた得意先名簿、仕入先名簿等はなかったはずであると主張するが、得意先名簿は平成元年一二月二二日付のものが、仕入先名簿は同年一一月二入日付のものが存在した。

カラーサンプルについては、原告は、長年にわたりコンベヤベルトカバーを製造、販売してきた経験から、一番から一三番までの村田カラーを生み出し、これが顧客の間に定着し、色番号で取引できるに至ったところ、被告は、原告のカラーサンプルの社名欄を切除して空欄に「サンロジック」の記名印を押捺しただけで、これをそっくりそのまま模倣したものである。なお、被告は、平成二年一〇月以降は原告のカラーサンプルを使用していない旨主張するが、この九か月後である平成三年七月六日に原告のカラーサンプルを改ざんし、空欄に「サンロジック」の記名印を押捺したものを新川レジン工業の結城社長に渡している。

2 被告は、原告の営業課長の職にあった平成二年五月末頃、原告の了解を得 ることなく、原告の下請先である田中化成工業こと田中逸夫(以下「田中化成工業」という)に対し、原告が注文者であるかのように装い、田中化成工業をその旨誤信させ、田中化成工業をして原告が秘密としている原告のモールドを使用して将来被告が独立したときに使用する予定の金型MLCベルト幅六〇〇上下マスター二面、同一八○○上下マスター二面、同二〇〇〇上下マスター二面、MMC一六〇〇上下マスター二面を作らせ(同年七月一八日代金支払)、これらを同年七月三日原告出入りの運送業者である金田運送こと金田毅(以下「金田運送」という)に依頼して金山化成工業所こと山崎茂(以下「金山化成工業所」という)の工場内に運び、更に金山化成工業所にMLC上下モールド二面、MMC上下マスター二面を作らせ、原告のコンベヤベルトカバーの生産方法に関する営業秘密を取得した。なお、被告は、右一〇面のマスターのほかに、更に一六面のマスター(合計で二六面)を作らせた。

被告は、平成二年七月二〇日に初めて原告に退職したい旨を申し出、原告はそのとき初めて被告が退職の意思を有していることを知ったのであるから、右の準備行為を原告が了解したものであるはずはない。そもそも、企業が、自己の製品と同じ物を製造、販売するライバルとなる者に、その者が準備行為をすることを了解し、協力することなどありえない。実際は、被告は、退職申出の際、他の仕事をしたいと言って、FRPのことは全く口に出さなかったのであり、村田社長は、もし被告が退職後にFRP製コンベヤベルトカバーを製造、販売するとか、カバーは金山化成工業で作るとか言っていれば、被告を懲戒解雇し、当然退職金も支払っていなかった。

3 被告は、平成二年七月一〇日、原告の協力工場である株式会社三木製作所(以下「三木製作所」という)を介して丸晋工業株式会社(以下「丸晋工業」という)に対し、原告が注文者であるかのように装い、丸晋工業をその旨誤信させ、丸晋工業をして原告が秘密としている金型を使用してコンベヤベルトカバーの取付用部品であるUクリップ三九五〇個を製造させ、これを三木製作所に依頼して金山化成工業所に送らせ、原告のコンベヤベルトカバーの部品生産方法に関する営業秘密を取得した。

Uクリップは、原告が試行錯誤の後独自に考案し、かつてはこれについて実用新案権も有していたものであって、三木製作所を介して丸晋工業に製造させていた(独特の曲がりがあるため金型六面を用いて製造する)。被告は、原告においてその発注業務を担当していた地位を利用して、このルートにより原告が注文し仕入れるのと全く同じ欠陥のないUクリップ三九五〇個を、何らの時間、費用、労力をかけずに短時間に確実に取得できたのである。このことは、被告だからこそできたことであって、第三者であればできなかつたことであり、そこに営業秘密(第三者に知られていない営業上の利益)があった。Uクリップを使用したのは、被告主張の東海ゴム工業株式会社よりも原告の方が先である。

被告は、Uクリップのほかにも、原告のコンベヤベルトカバーの取付用部品(チェイン付ストップピン、窓用ベルト丁番、フック、パイプフック、丁ナット付押さえボルト)の形状、寸法についての営業秘密をその設計図とその部品のサンプルにより持ち出して、同じ物を製作し、これらをコンベヤベルトカバーの販売に供した。

4 被告は、前記平成二年七月二〇日の退職申出後は、同年八月二〇日に退職するまでの間五日間しか出勤せず、残りの二〇日間程度は独立後の取引先となる得意先を原告の費用で訪問していた。

5 被告は、同年八月二〇日に原告を退職するや、右1(一)のとおり取得した原告設計図、得意先名簿、仕入先名簿の営業秘密を使用して、原告の得意先などに営業活動を開始し、注文を取得し、平成三年七月六日、新川レジン工業の結城社長に被告のSKC型カバーの設計図九枚を渡し、同日以降、新川レジン工業において、前記2、3記載の営業秘密を使用して原告製品と同一の被告製品を製造し、これを原告の得意先などに販売している。

被告は、被告製造のサイドカバーは、被告が独自に山本木型製作所に製作させた木型を使用して製造したものであり、原告設計図を盗用したということはない旨主張するが、仮に被告がその主張する乙第二五号証(被告作成の「サイドカバーの製造過程」と題する平成六年九月六日付書面)の手法で木型からサイドカバーの成形型を作ったのであれば、一五〇〇Hの成形型はきちんと仕上がるものの、それより小さいサイズのものは、元モールドを切断して短縮し、切断面をつき合わせて小さく接合していくことになるから、必ずリブを横切る水平方向に接合跡ができるはずであるにもかかわらず、現実の被告の成形型及び製品には右のような接合跡がないし、右一五〇〇Hの木型の納品書が平成三年九月三〇日付である(乙三の2)から、平成二年九月二〇日の営業開始から一年以上もの間、成形型が全くなかったということになる。したがって、被告は、右手法によってではなく、原告のモールドを無断で使用してサイドカバーを作ったことが明らかである。

【被告の主張】

1(一) 被告が平成二年五月頃から退職する同年八月二〇日まで原告の営業課長の職にあったことは認めるが、原告の営業秘密を取得したこと、原告設計図を大量にコピーして持ち出したことは否認する。

被告が原告在職中に、原告の了解の下で、顧客に対する原告製品の説明用資料として原告設計図の一部をコピーしたことはあるが、これは、原告が秘密としていたものではない。

また、被告の在職中、原告には得意先名簿、仕入先名簿なるものは存在していなかった。

(二) 被告が原告の下請先である田中化成工業に対し、被告名義で、被告製品のためのマスターを発注して作らせ、これらを金田運送に依頼して金山化成工業所の工場内に運び、金山化成工業所に被告名義で被告製品のためのマスター及びモールドを発注したことは認めるが、被告が原告が注文者であるかのように装ったとの事実、原告の営業秘密を取得したとの事実は否認する。

なお、被告製品の発注の大部分は、原告を退職してから後のことである。

(三) 被告が、平成二年七月一〇日、三木製作所に対し、コンベヤベルトカバーの取付用部品であるUクリップ三九五〇個の製造を依頼し、その後、三木製作所に依頼して右Uクリップを金山化成工業所に送らせたこと、原告がUクリップについて実用新案権を有していたこと、被告が原告においてその発注業務を担当していたこと、被告がチェイン付ストップピン、窓用ベルト丁番、フックを製造、販売したことは認めるが、丸晋工業がUクリップを製作したことは知らないし、被告が原告が注文者であるかのように装ったとの事実、被告が営業秘密を取得したとの事実、Uクリップは原告が試行錯誤の後独自に考案したものであること、営業秘密があるとの事実、被告が取付用部品のサンプルを持ち出したこと、被告がパイプフック、丁ナット付押さえボルトを製造、販売したこと、取付用部品の形状、寸法が営業秘密であることは否認する。

被告は、三木製作所に対し、被告が原告を退職することを明らかにした上で、被告の名義でUクリップを注文したものである。

Uクリップは、元来、コンクリート流し込み枠材を固定するために考案されたもので、コンベヤベルトカバー固定部品として利用される前から建築業界では広く利用されていたし、コンベヤベルトカバー固定部品としても、原告が使用する前から東海ゴム工業株式会社が使用していた。

また、Uクリップは、非常に簡単な構造をした部品であり、製作に特別の技術がいるというものではない。原告は、仕入単価が安いという理由で、仕入先を他の会社から三木製作所に変更しただけのことであり、従前の会社も三木製作所の下請けという丸晋工業も、家内工業的な企業であり、特に優れた技術力を持っているわけではない。原告主張の実用新案権も、コンベヤベルトカバーの取付け方法に関するものであり、Uクリップの形状等に関するものではない。

(四) 被告が平成二年八月二〇日に原告を退職した後、営業活動を開始し注文を取得したこと、被告が平成三年七月六日以降新川レジン工業において被告製品を製造していたこと、被告が被告製品を販売し、その販売先に原告の取引先が一部含まれていたことは認めるが、被告が取得した営業秘密を使用したとの事実は否認する。

2 原告主張の原告設計図、得意先名簿、仕入先名簿、カラーサンプルは、次のとおり、そもそも原告の「営業秘密」ではなく、被侵害利益が存在しない。

(一) 原告設計図は、被告が原告に在職中、顧客に説明するための営業用資料・設計打合せ用資料として常時社外に携行していたものであるが、持出しのための社内手続は一切なかったし、図面を保管していたキヤビネットは鍵のかからない鉄製のものであり、誰でも自由に取り出せる状態にあった。また、顧客からの要望により、原告設計図が顧客の下に留め置かれることも珍しくなかったが、その際、原告が顧客に対し原告設計図を秘密扱いにするよう要請したこともないし、そもそも承認返却図として使用される場合は別として、留め置かれた原告設計図が回収されることさえなかった。更に、顧客の下に留め置かれた原告設計図は、その後の発注資料などとして、原告に断りなく使用されることも多かったが、原告がこれに対し異議を述べることはなかった。

原告設計図の用途についていえば、コンベヤベルトカバーの設計図等に記載された寸法、形状は既にカタログ、市販製品などにより開示されていることや、原告設計図の実際の利用方法から考えて、製品を製造する際に技術的に必要不可欠なものではない。すなわち、原告設計図は、設計図本来の機能を有しておらず、技術的に価値のないものである。

(1) 原告は、原告設計図は木型や製品の製造のためにも必要であるとするが(甲二九)、現実の量産体制の下では、成形型から製品が製造されるので、一度成形型を作ってしまえば、再び木型を製造することは実際上なく、したがって、そのために設計図を使用することもない。

(2) また、コンベヤベルトカバー等の主要な仕様は、カタログ等で開示済みであり(甲五の1・2)、設計図がなくても、既に開示されているカタログの寸法と市販されている製品の分析から、必ずしも高度の専門知識や技術、高コスト、長期間を要せずとも、原告製品を製造することは極めて容易であり、この意味からも原告設計図には技術的価値がないといえる。

(3) 更に、FRP製コンベヤベルトカバーは、鉄板製コンベヤベルトカバー等とは異なり柔軟性を持っているため、多少の寸法の狂いがあってもベルトコンベヤに設置することは十分可能であり、その意味で、機械部品などと異なり精度が要求されていない。現に原告のコンベヤベルトカバーについても、FRPの不可避的な硬化収縮により図面寸法の〇・二%ないし〇・三%の誤差が生じるため、設計図どおりの寸法にならないのが通常であり、このように、原告設計図は、技術的な意味での設計図面としての本来の機能を果たしていないのである。

(4) なお、発注者(ユーザーなど)とメーカーとの間の打合せや発注者の内部連絡等のために、発注者があらかじめ図面に製品仕様の指示を書き加えた参考図を作成し、その参考図に従った承認図面の提出をメーカーに求めるということも行われているが、かかる承認図面は、単なる事務打合せのために用いられているにすぎず、製品製造に関する技術的なこととは無関係である。

(5) 加えて、原告における原告設計図の管理が極めて杜撰なものであったことをも考えると、要するに、原告設計図は、技術的な意味での本来的な設計図ではなく、単なる営業上の説明図ないしは打合せ図といった程度のものにしかすぎないのであって、技術的な価値のないものであることが明らかである。

(二) パソコンからプリントアウトされた得意先名簿、仕入先名簿については、被告はその存在さえ全く知らない。パソコンは、平成二年六月頃原告に導入され、各営業担当者が順次情報をインプットする作業をしていたが、同年七月当時は未だ得意先名簿、仕入先名簿は完成しておらず、パソコンからプリントアウトされた得意先名簿、仕入先名簿等はなかったはずである。なお、原告提出の甲第三号証添付の得意先名簿については、記載されている一八社のうちFRP製品に関係のある会社は「蒲田工業(株)京浜営業所」「蒲田工業(株)福山営業所」「金山化成工業所」の三社のみであり、同じく仕入先名簿についても、記載されている一三社のうち「金山化成工業所」と「大橋化成工業所」の二社のみである。このように、FRP製品と無関係な取引先を多数含む反面、取引条件、与信限度、集金方法、締切日、支払条件、担当者名等の営業活動に不可欠な事項の記載を欠いたリストを、原告在職中の被告がコピーして営業に使用していたとは、客観的に考えて不自然であり、そもそも右各名簿の信用性についても疑問を持たざるをえない。

また、原告の得意先や仕入先は、それ自体原告のパンフレット、会社案内、市販の情報誌等により開示されており(甲五一、乙二一、二二、三五)、原告の営業秘密とはいえない。原告において長年にわたりFRP製コンベヤベルトカバーの営業関係業務一切を一人で取り仕切り、日頃の付合いにより顧客や仕入先の細かな事情まで熟知していた被告にとって、得意先名簿や仕入先名簿のコピーなど何の意味も持たないのである。

(三) カラーサンプルは、日本塗料工業会が定める誰もが利用できる色票番号とマンセル値を使用したものにすぎず、また、マンセル値の色番号により色が指定できるようなサンプルを作成することは何ら独創的な発想でもなく、そもそも客に見せる「サンプル」であるから、何ら原告のノウハウに属するものではない。

また、被告が原告のカラーサンプル台紙を持っていたのは、被告が原告を退職する以前から営業用資料として持ち歩いていたものがたまたま手元にあっただけであり、退職時にことさら被告の営業のために持ち出したというものではない。なお、被告は、平成二年一〇月頃以降は、被告自身の製作したカラーサンプルを使用している。

3 更に、以下の事情から明らかなとおり、被告の行為は、通常の自由競争の範囲内のものであり、営業秘密を「不正に」取得したなどの違法なところは全くなく、不法行為を構成するものではない。

(一) 被告の退職の経緯

被告は、原告を退職する約一か月前に村田社長に退職を申し出たときから、村田社長に対し、退職後は独立してFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売の事業をすること、FRP製コンベヤベルトカバーは金山化成工業所で製造することなどを告げていた。村田社長もこれを了解し、被告との間で競業の禁止ないし制限の契約等を締結することなく、何らの条件も付けずに被告を円満退職させ、更には、後記(二)のとおり被告の独立のための準備期間すら与えた。

大阪の中小企業にはいわゆる「暖簾分け」という慣習があり、独立後競合するような事業を営むことを前提に円満に退職し、独立するということは決して稀なことではない。村田社長自身、普段朝礼等で、「村田商会を退職して他社へ移ったり独立したりしたときは、村田にいたことが必ず役に立つ」と訓示するなどしており、被告が退職し、独立する際にも、これからは競争相手としてお互いがんばろうという趣旨のことを述べ、原告の得意先に対しても同趣旨の発言を行っていた。

原告が被告の営業活動にクレームをつけるようになったのは、原告は、被告の退職、独立の時点においては被告が独立してもコンベヤベルトカバー市場で活動していくことは無理であると判断していたところ、予想に反して被告が健闘し、更には昨今の不況のため少しでも原告の業績を維持する必要が生じたからであろうが、被告としては、退職後FRP製コンベヤベルトカバーの仕事をすることを前提に円満退社したはずであるのに、突然原告から訴訟を提起され、非常に困惑している。

(二) 在職中の被告の準備

被告は、原告の了解の下で、次のような準備行為を行った。

(1) 被告が原告在職中、退職後のために準備行為をしていたということはあるものの、それはあくまでモールドやマスターの製造を発注するといった準備行為にとどまるものであり、例えば、原告と同種のFRP製品を製造、販売するなどといった競業行為そのものを行ったわけではない。

(2) 準備行為を行った時期も、村田社長に退職の意思を伝えた後か、早くてもその直前のことであり、期間も平成二年八月二〇日に正式に退職するまでの間の約二か月足らずという極めて短い期間であった。

同年七月二〇日頃からは、被告は、村田社長から、独立に当たってはいろいろと準備があるであろうから、必要なことがあれば適宜呼び出すので連絡がつくようにさえしておいてくれれば出社する必要はないと指示されてこれに従ったが、この時期においても、被告が担当していた業務を引き継ぐ予定であった原告の従業員西垣勲や熊本専務と同行して、大阪近郊にある原告の得意先に挨拶訪問をするなどの必要な原告の業務は行っていた。

(3) 被告は、モールドやマスターの製造を発注するという準備行為を行うについて、特に原告の従業員としての地位を利用して強制的にしかも低価格で右モールド等を作らせたというようなことはない。

この点、村田社長の平成五年八月二五日付報告書(甲四)、田中逸夫(田中化成工業)の平成三年一〇月一日付報告書(甲九の1)及びその平成五年八月二五日付訂正文(同号証の2)、金田毅(金田運送)の平成三年九月一二日付念書(甲一〇)には、あたかも被告が原告の従業員としての地位を利用して強制的に仕事を行わせたかのような記載があるが、全く信用性がない。

すなわち、まず、田中化成工業についていえば、被告は、被告個人でする旨を明らかにした上で製品を発注しており、田中化成工業からは「サンロジック」宛の領収書も発行されていて(乙二)、製品代金として支払われた一五万円も全く適正な価格である。また、金田運送については、被告はむしろ金田運送から、原告の仕事がないときに利用してほしい旨依頼され、原告の仕事とのスケジュールが重ならないように配慮しながら、月一回程度のスポット発注をしていたにすぎず、主たる出荷は、外注工場の近くにある運送会社を利用していた。当然のことながら、金田運送は、被告が原告の製品を運ぶのではなく、被告独自の製品を運ぶことを承知していたものである。

(4) 被告が退職前に原告設計図等について膨大な量のコピーをとっていたということはない。被告は、原告の営業活動の一環として、顧客の要望により参考図や承認図面としてコピーをとったことはあるが、それは通常の分量であり、独立後の自己の営業活動のためにこれらのコピーをとったということは全くない。

(5) 被告製造のサイドカバーは、被告が独自に山本木型製作所に製作させた木型を使用して製造したものであり、原告設計図を盗用したということはない。サイドカバーは、形状が簡単なため、原告設計図がなくとも、容易に木型を製造することができるのである。被告のサイドカバーは一つの木型があればすべてのタイプの製品の製造が可能であり(乙二五)、被告は、原告のモールドを使用してサイドカバーを製造したことはない。

なお、SOC一二〇〇型のサイドカバーは、被告が原告を退職後に独自に開発したものである。

(6) 被告が原告のハンドル取付要領図(甲二添付の写真4のもの)を取得し、使用しているということはない。

被告は、右ハンドル取付要領図に記載されているようなセルフロッキングナット方式によるハンドルの取付けを行っていないため、そもそもこのような図面を用いる必要はない。

仮に、右取付要領図が新川レジン工業にあった被告の預かり品の中から発見されたということであれば、それはハンドルの製造元である三笠鋲螺株式会社(原告のハンドルも製造していた)が誤って入れたとしか考えられない。

(三) 原告製品と被告製品との同一性

コンベヤベルトカバーは、ベルトコンベヤ自体のフレーム幅やキャリヤベッドの大きさがJIS規格により統一されているため、カバー自体の大きさ、形状も自ら決まってくるものであるが、そのような状況の中でも、被告は、原告製品との違いを強調するため、一部製品につき中間リブをなくしたり(甲六のSSC型コンベヤベルトカバー)、矢印をカットしたりするなどしてデザインを工夫してきたのである。特に中間リブをカットしたことにより、外見上、原告製品と被告製品との相違は一目瞭然となった。矢印をなくすことにより、カバー内面がフラットになってフレーム壁と密着することとなり、粉末状の運搬物が飛散するのを防止できるという実質的な効用もある。

(四) 職業選択の自由

被告は、原告入社前に勤務していた株式会社青林舎の時代を含めて約二〇年間、FRP製品、特にFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売に携わってきたものであり、その職務の専門性からして、転職が非常に困難であるといえる。

原告は、FRP製品市場に進出してから二〇年以上になる従業員数二〇名ほどの、業界では有力な会社であり、FRP製コンベヤベルトカバー以外にも様々な分野に進出しているのに対し、被告は、FRP製品市場に新規参入しようとする個人企業であり、FRP製コンベヤベルトカバーの製造販売だけで生計を立て、妻と二人で営んでいる零細企業であって、その力の差は歴然としている。にもかかわらず、原告は、例えば被告の取引先に対し被告との取引を止めるよう執拗に申し入れるなど、様々な場面においてFRP製品市場における自己の優越的な地位を利用して、被告の新規参入を強引に阻止するような行動をしているのであり、被告の職業選択の自由を奪うものにほかならない。

(五) 退職後の被告の営業の仕方

被告は、例えば、技術面ではサイドカバーの取付方式に独自のものを取り入れるなどの工夫をしているし、コンベヤベルトカバー以外のものの製造についても企画している。販売先についても、市場が限られているという限定の下ながら新規の販売先を開拓し、原告と競合する販売先については原告の販売量との比率について一定の配慮をしており、仕入先については、現在では原告の仕入先と競合するところはない。

四  争点3(被告に損害賠償義務があるとした場合に、原告に賠償すべき損害の額)について

【原告の主張】

原告は、被告の不法行為により、次の1ないし3の合計三二三一万四〇八〇円の損害を被った。

1 一般にコンベヤベルトカバーを製造、販売するには、設計図面・カタログ・カラーサンプルの作成、型類の製作、取付用部品の発注製造、取付図の作成、協力工場の獲得、取引先の開拓、その他ノウハウの取得が必要であり、営業を開始するまでに約三年間の期間を要する。しかるに、被告は、前記のとおり原告設計図の複製その他の不正行為を行い、原告在職中に独立後の自己の営業行為をなし、退職と同時に原告の得意先に原告製品と同じ製品を原告の価格に比し大幅に安い価格で販売しており、それ以後も、住友重機械工業、NKK福山、丸菱商事、日本コンベヤ、ブリヂストン、王子工営、日清エンジニアリングなど五〇社近くと取引を継続している。

このような被告の著作権侵害その他の不法行為がなければ、被告はコンベヤベルトカバーの販売ができなかったはずであるところ、被告は、次のとおりコンベヤベルトカバーを販売し、合計二三六九万円の純利益を得ている。したがって、原告は、被告の得た右純利益相当額の利益を失った(著作権法一一四条一項)。

売上高 純利益

平成二年(九月~一二月) 四五〇万円 〇円

平成三年 五〇〇〇万円 〇円

平成四年 一億〇六〇〇万円 一〇五四万円

平成五年 二二〇〇万円 〇円

平成六年 四八〇〇万円 三八二万円

平成七年 二七〇〇万円 一二〇万円

平成八年(一月~一〇月) 四五〇〇万円 八一三万円

合計 三億〇二五〇万円 二三六九万円

2 被告は、金山化成工業所に保管されていた原告のMT七五〇マスター上下二面、MT九〇〇マスター下一面の各矢印部分を削り取らせた。そのため、原告は、合計三三万八〇〇〇円の修理費用の支出を余儀なくされ、同額の損害を被った。

(一) MT七五〇上下二面 二二万円

(二) MT九〇〇下 一面 一一万八〇〇〇円

3 原告は、被告の前記不法行為に対処するため、次のとおり弁護士費用その他の裁判関係費用合計八二八万六〇八〇円の支出を余儀なくされ、同額の損害を被った。

(一) 金山化成工業所に対する仮処分申立て 一七七万四九六二円(甲二一)

(1) 弁護士手数料 八八万八八八八円

(2) 弁護士出張旅費手当 三一万二八八〇円

(3) 裁判用費用等 七万三〇二一円

(4) 原告社員出張費 四四万七一二六円

(5) 写真コピー代 五万三〇四七円

(二) 新川レジン工業に対する仮処分申立て 一五一万七三三九円(甲二二)

(1) 弁護士手数料 八一万八〇〇〇円

(2) 弁護士出張旅費手当 四〇万七三五七円

(3) 調査費用 三万円

(4) 原告社員出張費 二〇万三八一八円

(5) 写真コピー代 五万八一六四円

(三) 被告に対する先行仮処分事件の申立て 二一五万三四七三円(甲二三)

(1) 弁護士手数料 六〇万円

(2) 調査費用 八五万円

(3) 見解書作成費用 二〇万円

(4) リバースエンジニアリング

実験費(原告製品かも設計図が作れるか) 一九万五七〇〇円

(5) 原告社員出張費 二一万〇一六七円

(6) 写真コピー代 八万二六〇六円

(7) 挨拶状作成費 一万五〇〇〇円

(四) 被告に対する先行仮処分事件の申立却下決定に対する即時抗告 一六八万〇四八三円(甲二四)

(1) 弁護士手数料 一五〇万円

(2) 裁判用費用 三万円

(3) リバースエンジニアリング

実験費(原告製品から設計図が作れるか) 六万六四五〇円

(4) 原告社員出張費 二万二八〇一円

(6) 写真コピー代 三万二二三二円

(7) 挨拶状作成費 二万九〇〇〇円

(五) 本件訴訟 一一五万九八二三円(甲二五)

(1) 弁護士手数料 七九万円

(2) 印紙・切手代

(一部即時抗告分を含む) 二五万四二〇四円

(3) 原告社員出張費 三万二三〇四円

(4) 写真コピー代 八万三三一五円

【被告の主張】

1 原告の逸失利益について

(一) 原告は、著作権法一一四条一項に基づいて損害額の主張をするが、この推定規定は、そもそも原告に逸失利益の損害が発生していなければ働かない規定であるところ、以下のような事情を考えれば、原告には逸失利益の損害が発生したとはいえないので、同条項に基づく損害額の主張は失当である。

(1) 一般的に、被告の売上高は、被告の努力、経営力、販売力、経済状況、需要者の趣向等の様々な要因が大きく関係しあって決まるものであるから、仮に被告製品の販売ができなかったとしても、当然にその分、原告製品の売上げが可能であったとはいえず、被告製品の製造販売により原告に逸失利益の損害が発生するということにはならない。

(2) 具体的にも、本件においては、以下のとおり、被告製品の売上高ないし利益は、コンベヤベルトカバー業界の特徴、被告の営業努力、原告の営業方法等の様々な要素に影響されており、原告に逸失利益の損害が発生したとはいえない。

我が国におけるコンベヤベルトカバー業界においては、五社程度の主要メーカーが存在し、一つのプロジェクトを受注するために最低五社が競合して販売競争をするのが通常であり、この場合、コンベヤベルトカバー自体が単純な製品であること、各社のコンベヤベルトカバーの形状、機能等に大きな差異がないことなどから、ユーザーが製品を決定する際には、製品そのものの性能というより、むしろ営業努力、製品管理能力、納入価格、ユーザーとの人的信頼関係といったものが重要になってくる。また、原告設計図は、前記のとおりその技術的価値が低く、単に承認図として使用されているにすぎないことからすれば、売上高に影響する度合いは極めて低いというべきである。しかも、コンベヤベルトカバー市場では、製品の特殊性からユーザー数が限られている上、いわゆるバブル経済の崩壊後ユーザーが新規の発注を手控える傾向にあり、受注競争が激化しているから、なおさら営業努力等が重要になってくるのである。

右のような状況にあるコンベヤベルトカバー市場において、被告は、普段からこまめにユーザーを訪問してコンベヤベルトカバーの需要に関する情報を収集し、仕入先(製品の製造を発注した下請先)に出向いて徹底した品質管理を行った上で間違いのない製品を納入し、納入した製品に万一トラブルが発生すれば直ちに現地に赴いてアフターケアに努める等、地道な営業努力を続け、売上げを上げてきた。また、被告は、長年FRPの仕事に携わってきた経験から、FRPの製造工程を熟知しており、例えば現場でユーザーから納入価格の見積りを尋ねられたとき、即座にその場で原価計算をし価格概算を示して交渉したり、納入した製品にトラブルが発生したときには、その場でトラブルの原因を検討し直ちにフォローする等、他社とは異なった機動的なサービスを行ってきたのであり、この点が被告製品の売上げに大きく貢献してきたのである。

その結果、被告は、原告を退職した後、従来原告とは取引のなかった新規の取引先を開拓することにも成功し、新規開拓顧客に対する売上高は全売上高の二割程度を占めている。

これに対し、原告では、被告が退社した後、FRP製コンベヤベルトカバーの販売担当者が次々と退職して頻繁に変わり、ユーザーとの間で十分なコミュニケーションが取れない上、販売担当者自身にFRP製品に関する十分な知識がないため、製品納入前の品質管理、納入後のトラブル処理、アフターケアに問題があった。例えば、平成六年夏頃には北陸電力七尾向けの製品に色の不良があり、平成五年一一月頃には電源開発竹原向けの製品に外観不良があり、問題となった。ユーザーに取付用部品の種類や数量を間違って納入しトラブルが発生したこともあった。代理店にユーザーとの交渉を行わせておきながら、最終段階になって代理店を抜きにして直接ユーザーとの交渉を成立させるなどの原告の独善的な取引方法により、代理店との間の信頼関係が損なわれたこともあった。

(二) 仮に原告に逸失利益の損害が発生したとしても、そしてその損害額を原告主張のように被告の純利益を基礎として算出するとしても、以下の点を考慮すべきである。

第一に、被告の全売上高の中には本件で問題となっているコンベヤベルトカバー等以外のもの(例えば、ステンレス製部品、鉄製部品、下水処理場向けの蓋、立体駐車場向け部品等)の売上高も含まれており、コンベヤベルトカバー等の売上高は、全体の九割程度であるから、全売上高の九〇%を前提とした純利益を考えるべきである。

第二に、丸カバーのうち被告が独自に製作した型から製造したもの、サイドカバー(前記のとおりすべて被告が独自に山本木型製作所に製作させた木型を使用して製造したものである。その売上高は、コンベヤベルトカバーの売上高の一五ないし二〇%を占めている)、被告が売却した材料の売上高、取付用部品(すべて被告が独自に製作した型に基づき製造したものである)、その他の製品は、本来原告の権利を何ら侵害していない製品であるから、被告の全売上高からこれらの売上高を控除すべきであり、その売上高の額は、平成三年八〇八万九七四〇円、平成四年五八〇七万〇一七〇円、平成五年一三二一万一三九二円、平成六年二三六四万四二六三円、平成七年一六三〇万〇五〇〇円、平成人年(一月~一〇月)二四二一万八〇九〇円である。

第三に、被告は、平成三年一七三万八九五九円、平成五年五七七万二一五五円の赤字であるから、原告主張の損害額からこれらの合計額七五一万一一一四円を差し引くべきである。被告は、個人事業主であって、ある年度に損失が出ても、会社のように翌年度に損失を繰り越すということができないからである。

2 マスター三面の修理費用について

被告が原告主張のマスター三面の各矢印部分を削り取らせたという事実はない。矢印のない製品を作るためには、マスターから製作されるモールド(成形型)の矢印部分を埋めることにより十分可能であって、被告が金山化成工業所にあるマスターの中からこれらの三面だけについて矢印部分を削り取らせる理由はない。

3 裁判関係費用について

(一) 金山化成工業所及び新川レジン工業に対する仮処分申立て

右各仮処分申立てについて、原告は、単に抽象的に「被告の前記不法行為に対処するため」と主張するのみで、原告の主張する不法行為のどの部分について、どのように対処するため、どのような仮処分を申し立て、その審理がどのように進められたかについて、全く主張立証しない。

そもそも、右各仮処分申立ては、被告の下請先に対する被告製品の製造販売差止めの仮処分を申し立てたものであるところ、被告に対する先行仮処分事件において、被告製品の製造販売の差止めを求める仮処分申立ては却下されているのである。

更に、右各仮処分申立てが和解により終了し、申立ての内容についての判断が下されていないことをも考慮すれば、右各仮処分申立てに要した費用は、本件と相当因果関係にある損害とはいえない。

(二) 被告に対する先行仮処分事件の申立て及び申立却下決定に対する即時抗告

前記第二後段のとおり、先行仮処分事件は、原告が被告に対して不正競争防止法及び民法七〇九条に基づき被告製品の製造販売の差止めを求めるととともに、著作権法に基づき被告設計図1ないし7の複製の差止め及び廃棄を求めたものであるところ、大阪地方裁判所は、原告の仮処分申立てをすべて却下し、その即時抗告審である大阪高等裁判所も、被告製品の製造販売の差止めを求める申立てを却下した部分は原決定を維持した。本件訴訟においても、原告は、被告設計図の複製の差止め及び廃棄並びに不法行為に基づく損害賠償の請求をしているにすぎず、先行仮処分事件において却下された被告製品の製造販売の差止めの請求はしていない。

(1) しかして、仮処分申立てについて原告の主張する損害は、以下の理由により、いずれも本件と相当因果関係のある損害とはいえない。

まず、弁護士手数料六〇万円及びリバースエンジニアリング実験費一九万五七〇〇円については、そもそも原告の仮処分申立てが却下されているのである。

調査費用八五万円、見解書作成費用二〇万円及び挨拶状作成費一万五〇〇〇円については、その内容が全く不明である。

原告社員出張費二一万〇一六七円及び写真コピー代八万二六〇六円については、その内容が必ずしも明らかでなく、金額的にみても、その全てが本件と相当因果関係のある損害であるとはいいがたい上、そもそも原告の仮処分申立てが却下されているのである。

(2) 即時抗告について原告の主張する損害のうち、弁護士手数料一五〇万円については、即時抗告が一部棄却されている以上、その全てが本件と相当因果関係のある損害とはいえない。

リバースエンジニアリング実験費六万六四五〇円については、専ら原告が仮処分申立てを却下された被告製品の製造販売の差止めに関わる部分の費用であるから、本件と相当因果関係のある損害とはいえない。

裁判用費用(内容証明手数料)三万円、原告社員出張費二万二八〇一円、写真コピー代三万二二三二円及び挨拶状作成費二万九〇〇〇円については、その内容が必ずしも明らかでなく、本件と相当因果関係のある損害とはいえない。

第四  争点に対する判断

一  争点1(一)(原告設計図は、図形の著作物に該当するか)について

1  原告は、原告設計図は、いずれも原告が原告製品の製造販売を開始するに際し、原告の発意に基づき、原告の設計業務担当者においてその長年にわたる職務上の感覚、経験と技術的知見を駆使して試行錯誤の後創作したもので、機械工学上の技術的思想を表現した面を有し、かつ、その表現内容(その形状及び寸法)に創作性のあるものであるから、著作権法一〇条一項六号所定の図形の著作物に該当し、原告がその著作者であり、著作権者であると主張する。

著作権法上保護される著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(二条一項一号)のであって、創作的な思想又は感情それ自体が著作物として保護の対象になるのではなく、思想又は感情の創作的な表現(具体的表現形式)が保護の対象になることはいうまでもない。創作的な思想又は感情自体は、それが技術的思想である場合には特許権又は実用新案権による保護の対象となり、デザイン思想である場合には意匠権による保護の対象となるのであって、これらの工業所有権とは別に著作権による保護の対象とはならないことが明らかである。

しかして、証拠(甲二、一四ないし一六、四〇、証人袋禎治郎)及び弁論の全趣旨によれば、原告設計図は、原告製品、すなわちコンベヤベルトカバー(丸カバー、サイドカバー)及びこれらの取付用部品(アングル、ブラケット、Uクリップ、Uクリップ用チェイン付ストップピン、ヒンジ用ピン)という実用的工業製品を大量生産することを目的として、原告の設計業務担当者において現実に原告製品の製造に当たる者が設計業務担当者の意図したとおりの形状、寸法等の製品を製造することができるよう、その形状、寸法等を忠実に表現したものである。このような設計図は、その表現の対象となるものは単なる実用的工業製品のデザインであって著作物といえないことが明らかであるが、設計図についても、設計図に関する一般的知識を有する者であれば誰でも理解できる一般的な製図法のルールに従って作成されるのが通常であり、その表現方法に創作性を見出すことができる場合は少ないといわなければならない。

以下、個々の原告設計図について、具体的に検討する。

2  証拠(各項掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば、原告設計図は、それそれ次のようなものであることが認められる。

(一) 原告設計図1(別紙原告設計図目録1記載の各設計図。甲二)は、原告製品のうちMLC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の各設計図面であるところ、いずれも、上段中央に正面図を、その左右に上カバーと下カバーの各側面図を配し、下段左側に縦断側面図(下カバー上カバーラップ詳図、補強リブ及取付センター詳図)を配したものであり、正面図は、両フランジから垂直に立ち上げ、これに小さな半径Rの円弧を続け、右両円弧を中央の大きな半径Rの円弧で結んだ背の低い逆U字形の形状を、上カバーと下カバーの各側面図は、側面から見て略横長長方形の外面に両端を含め四本のリブを設け、上カバーについては更に特注品として点検用窓を設けた形状を、縦断側面図は、上カバーと下カバーの両端の各リブ(下カバー両端の各リブの半径Rは、上カバー両端の各リブの半径Rよりやや小さい)の接合状態及び補強リブの縦断面を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・各円弧の半径Rの数字を用いて表現したものである。

(二) 原告設計図2(別紙原告設計図目録2記載の各設計図。甲一六)は、原告製品のうちMMC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の各設計図面であるところ、いずれも、上段中央に正面図を、その左右に上カバーと下カバーの各側面図を配し、下段左側に上カバー詳細図を、右側に下カバー詳細図を配したものであり、正面図は、両フランジから垂直に立ち上げ、これに小さな半径Rの円弧を続け、右両円弧を中央の大きな半径Rの円弧で結んだ背の低い逆U字形の形状を、上カバーと下カバーの各側面図は、側面から見て略横長長方形の外面に両端を含め三本のリブを設け、上カバーについては更に特注品として点検用窓を設けた形状を、上カバー詳細図と下カバー詳細図は、上カバーと下カバーの両端の各リブ(下カバー両端の各リブの半径Rは、上カバー両端の各リブの半径Rよりやや小さい)の接合状態及び補強リブの縦断面を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・各円弧の半径Rの数字を用いて表現したものである。

(三) 原告設計図3(別紙原告設計図目録3記載の設計図。甲一六)は、原告製品のうちサイドカバーの設計図面であるところ、左側の上段と下段に外用カバーと内用カバーの各正面図及び底面図を配し、右側上段に右側面図(外用カバー、内用カバー共通)を、右側下段に外・内サイドカバー・ラップリブ断面図を配したものであり、正面図、底面図及び右側面図は、長方形の外面に上下端に達する両端のリブ(内用カバーのリブは、外用カバーのリブより幅が狭い)及び上下端に達しない左右各二本、合計四本の中間リブ並びに左右各二本の中間リブの間にハンドル及びフックを設けた形状を、外・内サイドカバー・ラップリブ断面図は、外用カバーと内用カバーの両端の各リブ(内用カバー両端の各リブの半径Rは、外用カバー両端の各リブの半径Rよりやや小さい)の接合状態を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・各円弧の半径Rの数字を用いて表現したものである。

(四) 原告設計図4(別紙原告設計図目録4記載の設計図。甲一四)は、原告製品のうち取付用部品である断面L字形のアングルの設計図面であるところ、右側に正面図として、左上隅及び左下隅を切り欠いた略六角形であって切欠きの近くに各丸穴を開けた形状を、左側に左側面図として、略縦長長方形の形状を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・丸穴の直径の数字を用いて表現したものである。

(五) 原告設計図5(別紙原告設計図目録5記載の設計図。甲一六)は、原告製品のうち取付用部品である断面コの字形のブラケットの設計図面であるところ、左側に正面図として、折曲部がごく小さな円弧をなすコの字形の形状を、右側に右側面図として、略縦長長方形の上部に丸穴を開けた形状を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・丸穴の直径の数字を用いて表現したものである。

(六) 原告設計図6(別紙原告設計図目録6記載の設計図。甲一四)は、原告製品のうち取付用部品であるUクリップの設計図面であるところ、中央に正面図を、左側に左側面図を配し、右上隅に軸用プッシュナット(後記(七)参照)の正面図及び右側面図を配したものであり、Uクリップの正面図及び左側面図は、開口部を狭めたU字形に屈曲した丸棒の一端から斜めにL字形の丸棒を延長した形状を、外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・U字形の屈曲部分の円弧の半径R・L字形部分を斜めに延長する角度・丸棒の直径の数字を用いて表現したものであり、軸用プッシュナットの正面図及び右側面図は、内側に向け突出部を設けたリング状の形状を、外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・リングの直径の数字を用いて表現したものである。

(七) 原告設計図7(別紙原告設計図目録7記載の設計図。甲一四)は、原告製品のうち取付用部品であるUクリップ用チェイン付ストップピンの設計図面であるところ、上段にUクリップ用チェイン付ストップピンの正面図及び右側面図を配し、左側の中段と下段にUクリップ用チェイン付ストップピンの使用方法を示す平面図と正面図を配したものであり、Uクリップ用チェイン付ストップピンの正面図及び右側面図は、二段になった細長い円筒形のピンに先端リング付のチェインを取り付けた形状を、使用方法を示す平面図と正面図は、UクリップのL字形部分先端をアングルの一方の丸穴に差し込み、UクリップのU字形屈曲部分でコンベヤベルトカバーのフランジとアングルとを挟み込んで締め付けた上、Uクリップ用チェイン付ストップピンをアングルの他方の丸穴に差し込み、チェインの先端リングをUクリップのL字形部分先端に嵌挿し、更に軸用プッシュナットを嵌めてUクリップのL字形部分先端が丸穴から抜けるのを防止する状態を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・二段になった細長い円筒形のピンの直径の数字を用いて表現したものである。

3  右2の(一)ないし(七)の認定によれば、原告設計図は、いずれも設計図に関する一般的知識を有する者であれば誰でも理解できる一般的な製図法のルールに従って作成されたものであり、その表現方法に創作性を見出すことはできないから、著作権法一〇条一項六号所定の図形の著作物に該当するということはできない。

原告は、原告設計図が図形の著作物に該当する理由として、原告の丸カバーの設計図は、原告製品の形状・寸法、表現方法において、他社の設計図と異なる特徴を有していると主張し、まず、(1)作図方法の点について、他社の丸カバーの設計図は、三角法で作図され、側面図は一枚だけで上下カバーが共用となっているのに対し、原告の丸カバーの設計図は、一枚の用紙に断面を中心に書き、その左右に上カバーと下カバーを配置し、左下側にリブのラップ部詳細図を書いた、三角法でない変則的な作図法を採っていると主張するが、原告の丸カバーのように、上カバーと下カバーとが共用ではなく、上カバーと下カバーが正面から見れば同じであるが、側面から見れば若干の差異があり(上カバーには特注品として点検用窓が設けられることがあり、下カバー両端の各リブの半径Rは、上カバー両端の各リブの半径Rよりやや小さい)、そして、上カバーと下カバーの両端の各リブの接合状態及び補強リブの縦断面は共通である場合に、一枚の用紙に上カバーの側面図と上下カバー共通の正面図及び縦断側面図を、もう一枚の用紙に下カバーの側面図と上下カバー共通の正面図及び縦断側面図を書く代わりに、一枚の用紙の中心に上下カバー共通の正面図(原告のいう断面図)を書き、その左右に上カバーと下カバーの各側面図を配置し、左下側に上下カバー共通の縦断側面図(下カバー上カバーテップ詳図、補強リブ及取付センター詳図)を配置するという点に格別創作性は認められない。原告は、また、(2)フランジからの立ち上がりについて、フランジから垂直に立ち上げ、R2とR1の二つの円弧を接線で結ぶ作図法は、原告独自のものである、(3)アジャスト代について、下カバーの耳リブに対し上カバーの耳リブを大きく広くし、スムーズなラップとカバーの収縮を吸収するアジャスト代を設ける等の他社にない原告の独自性を出している、(4)ラップ詳細図について、他社の四枚の図面では、上下カバーが共用であるので、当然、耳リブの寸法が上下カバーとも同じであり、したがって、同じ寸法の耳リブをラップさせることがスムーズにできないのはもちろん、長年月の使用中に発生する収縮等の寸法変更に対応できない、(5)リブの本数について、原告のMLC型の場合、脱泡及び成型作業がスムーズにでき、期待強度が確保できるようにリブの本数を四本に設定してあるが、他社の場合、リブは五ないし七本と多く、リブが三本連続しているものもあり、脱泡成型作業がスムーズに行きにくい、(6)取付方法別の図面について、原告の丸カバーの取付方法は、A型(両開き式)、B型(密閉脱着式)、C型(片開き式)の三種類あり、同一サイズで三枚の図面を作成してあるのに対し、他社の図面では両開き式の一種類しかない旨主張するが、これらの点は、いずれも原告の丸カバーの形状ないし機能に関するデザインないし技術的思想そのものであり、保護されるとすれば、意匠権や実用新案権等によって保護される余地はあるものの、これを表現した原告設計図そのものは、前示のとおり設計図に関する一般的知識を有するものであれば誰でも理解できる一般的な製図法のルールに従って作成されたものというほかはなく、その表現方法に創作性を見出すことはできないから、右主張はいずれも採用することができない。更に、原告は、原告のサイドカバーの設計図について、右の原告の丸カバーの設計図の特徴のほかに、(1)ラップ部について、主としてストレート式のラップ方法を採用して、若干のアジャストも可能となるようにされている、(2)中間リブの位置について、耳部から一六五mmと三三五mmの位置に四本のリブを配置して剛性と補強効果を与え、中央部は広くとって点検窓が取付可能にしてある、(3)ハンドル・フックの位置について、ハンドルは、両手で容易に着脱できるように中間リブの間に配置し、フックはその下側に取り付けてあると主張するが、右と同様の理由で採用することができない。

4  以上のとおり、原告設計図は、いずれも著作権法一〇条一項六号所定の図形の著作物に該当するとはいえず、他に著作物と認められるべき根拠もないから、原告設計図が著作物であることを前提に、その著作権に基づき被告設計図の複製の差止め及びその廃棄を求める請求は、争点1(二)(被告設計図は、原告設計図を複製したものであるか)について判断するまでもなく、理由がないといわなければならない。

したがってまた、被告が原告設計図に依拠してこれと同一性のある設計図を作成したとしても、著作権の侵害自体による不法行為も成立しないが、著作権の侵害自体はなくても不法行為の成立する余地はあるので、次に争点2について検討する。

二  争点2(被告の行為は不法行為を構成するか)について

1  前記第二の一(基礎となる事実)及び証拠(甲二、四、五の1・2、六、七、九の1・2、一〇、一一、一二、一四ないし一七、二〇、三〇、三三ないし三五、四〇、四二、五五、六三、六四、六五、七五、七六、九二、一〇八、乙二、三の1・2、二六、四〇、四七、証人袋禎治郎、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の(一)ないし(八)の各事実が認められる。

(一) 被告は、昭和四四年六月から昭和五〇年三月までの間、株式会社青林舎に勤務して主として浴槽、浄化槽等のFRP製品の製造業務に従事していたところ、同社を退職後の昭和五一年三月、FRP製品に関する技術を買われて原告に入社し、一貫してFRP製コンベヤベルトカバー等の原告製品の製造及び金型の製作の発注、販売活動等の業務に従事し、退職直前は営業課長の職にあった。

(二) 被告は、右のように営業課長の職にあった平成二年五月頃、原告を退職して自ら独立してFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売事業を営むことを決意した。

そこで、被告は、同年七月二〇日頃、村田社長に対し、FRP製コンベヤベルトカバーの製造販売事業を営む予定であることは告げることなく、別の仕事をしたいので原告を退職したいと申し出、慰留を受けたが、その二、三日後にも、村田社長及び熊本専務に重ねて退職の意向を告げ、ようやく同人らの了承を得た。

(被告は、原告を退職する約一か月前に村田社長に退職を申し出たときから、村田社長に対し、退職後は独立してFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売の事業をすること、FRP製コンベヤベルトカバーは金山化成工業所で製造することなどを告げており、村田社長もこれを了解し、被告との間で競業の禁止ないし制限の契約等を締結することなく、何らの条件も付けずに被告を円満退職させ、更には被告の独立のための準備期間すら与えた旨主張し、被告本人尋問において同旨の供述をするほか、乙第二四号証(日本コンベヤ株式会社総務部部長の平成五年九月二五日付陳述書)には、原告の村田社長は、平成二年七月下旬、日本コンベヤ株式会社の社長を訪ね、被告が退職して原告と同一のFRPカバー等を販売する会社を設立するということで相談したところ、同社社長から認めてやるよう助言された旨の記載があるが、いずれも甲第四号証(村田保春の平成五年八月二五日付報告書)、第七六号証(同じく平成六年一〇月一一日付報告書)、第九二号証(谷出仲祐の平成七年三月一六日付陳述書)の記載に照らし、採用することができない。)

(三) 被告は、退職を決意した直後の平成二年五月末頃から退職した同年八月二〇日までの間、退職後に営むべきコンベヤベルトカバーの製造販売事業のために、次の(1)及び(2)の行為を行った。そして、被告は、村田社長に退職を申し出た同年七月二〇日頃からは原告には五日間ほどしか出勤しないまま、同年八月二〇日退職し、同年九月一四日、規定どおりの退職金二三七万円余を受領した。

(被告は、同年七月二〇日頃からは、村田社長から、独立に当たってはいろいろと準備があるであろうから、必要なことがあれば適宜呼び出すので連絡がつくようにさえしておいてくれれば出社する必要はないと指示されてこれに従ったと主張し、被告本人尋問において同旨の供述をするが、前掲甲第四、第七六号証の記載に照らし、採用することができない。)

(1) 被告は、平成二年五月末頃、原告の許諾を得ることなく、原告の下請先である田中化成工業(奈良県宇陀郡大宇陀町)に対し、通常の原告からの発注であるかのように装って、被告が被告製品製造のために使用するコンベヤベルトカバー(丸カバー)のマスター八面(MLC六〇〇、同一八〇〇、同二〇〇〇、MMC一六〇〇の各上下マスター各一面)を注文し、そのように誤信した田中化成工業をして、原告が原告製品製造のために保管させていたモールドを使用してこれらを製作させ、同年七月一八日、田中化成工業に赴いて、代金一五万円を支払い、被告個人からの発注であることを初めて明らかにして「サンロジック」宛の領収証(乙二)を受け取った。そのガソリン代等の出張費用は、原告から支払われた。そして、被告は、同月三日、右のように田中化成工業に製作させたマスター八面を、原告出入りの運送業者である金田運送に依頼して金山化成工業所(金沢市)の工場内に運び、更に金山化成工業所にもMLC型の上下モールド各一面及びMMC型の上下マスター各一面等合計一〇数面のマスター及びモールドを製作させた(被告が原告の下請先である田中化成工業に対し、被告製品のためのマスターを発注して作らせ、これらを金田運送に依頼して金山化成工業所の工場内に運び、金山化成工業所に被告製品のためのマスター及びモールドを発注したことは、当事者間に争いがない)。右金田運送の運賃三万円は、被告が支払うことなく、原告から支払われた。

(2) 被告は、平成二年七月一〇日、原告の協力工場である三木製作所に対し、コンベヤベルトカバーの取付用部品であるUクリップ三九五〇個の製造を依頼し、同社は丸晋工業に発注して製造させ、被告は、同年八月二三日、三木製作所に依頼して右Uクリップを金山化成工業所に送らせ、四一一一個の納入を受けた(被告が、平成二年七月一〇日、三木製作所に対し、コンベヤベルトカバーの取付用部品であるUクリップ三九五〇個の製造を依頼し、その後、三木製作所に依頼して右Uクリップを金山化成工業所に送らせたことは、当事者間に争いがない)。

なお、被告は、右納入を受ける二日前の同月二一日にもUクリップ五〇〇〇個の製造を依頼した。

(四) 被告は、原告の許諾を得ることなく、原告が金山化成工業所に保管させていたマスター三面(MT七五〇上下カバー用マスター各一面、MT九〇〇下カバー用マスター一面)から、上カバーと下カバーを区別するための原告製品特有の上向き又は下向きの突設された矢印マークを削り取らせ、これから被告製品製造のためのモールドを製作させ、被告製品を製造させた。

なお、右矢印マークを削り取ったマスター三面は、金山化成工業所が原告の証拠保全申立てにより平成三年四月一二日に金沢地方裁判所の検証を受けた際に同所において確認されたものであり(甲一二)、金山化成工業所は、同年六月二六日、原告の申し立てた仮処分申立事件において、原告との間で、金山化成工業所は原告の承諾なくして原告所有のマスター、モールド(一部改造されたものを含む)、それらの金型を使用してFRP製コンベヤベルトカバーやカバー用金型を製造、販売しないことなどを内容とする裁判上の和解をした(乙四〇)。そこで、被告は、同年七月、金山化成工業所に保管させていた前記(三)(1)の合計二〇数面のマスター及びモールドを新川レジン工業に移し、それ以降は、同社にコンベヤベルトカバーを製造させている。

(なお、被告は、被告がマスター三面の各矢印部分を削り取らせたという事実はないとして否認し、被告本人尋問において同旨の供述をするが、甲第一二号証(平成三年四月一二日付検証調書)及び第二〇号証(袋禎治郎の平成五年八月二五日付「MTタイプ用マスター3面の矢印改造の件」と題する書面)によれば、右マスター三面のうち、MT七五〇上下カバー用マスター各一面は、昭和五八年四月一九日に原告が金山化成工業所に同モールド各二面とともに製作させ、MT九〇〇下カバー用マスター一面は、昭和五五年二月二一日に原告が尾田高分子工業に同上カバー用マスター一面及び同上下カバー用モールド各二面とともに製作させその後金山化成工業所に移して保管させ、いずれも原告製品製造のためのモールドの製作に使用していたものであること、前記証拠保全による検証の際、相手方である金山化成工業所こと山崎茂は、これらのマスターは、被告から預かっているものだと思うが、はっきりとした記憶はない旨指示説明をしたことが認められ、また、前掲甲第二、第一六号証、被告本人の供述によれば、原告のコンベヤベルトカバー(丸カバー)には、前記のとおり上カバーと下カバーを区別するための原告製品特有の上向き又は下向きの矢印マークが突設されているのに対し、被告のコンベヤベルトカバー(丸カバー)にはそのような矢印マークは突設されていないことが認められるから、他に特段の反証もない以上、被告が被告製品製造のためのモールドを製作させるために原告のマスター三面から右矢印マークを削り取らせたものと推認するほかはない。)

(五) 被告は、原告在職中の原告製品の販売活動の中で、顧客からの要望に応じ、営業用資料ないし打合せ資料としてカタログのほか原告設計図をコピーして用意した上、これを顧客に交付するなどしていたが、原告を退職するに当たり、これら原告設計図のコピーを原告に返還せず、また、FRP製品の担当者ないし営業課長としての地位を利用して改めて大量にコピーして持ち出し、原告退職後、製図業者に依頼して次のとおりこれら原告設計図のコピーに依拠してこれと全く同一ないし同一ということができる被告設計図を作成するなどした。

(1) 被告は、平成二年八月三〇日、前記一2(六)認定のUクリップの原告設計図6(D3-0027-70S-8)に依拠して、これと全く同一ということができる被告設計図6(D3-0027-70)を、同(七)認定のUクリップ用チェイン付ストップピンの原告設計図7(SPU-907-2A)に依拠して、これと全く同一ということができる被告設計図7(SPN-711)を、それぞれ作成した(甲一四)。

(2) 被告は、平成二年九月二二日、前記一2(一)認定のMLC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の原告設計図1に依拠してSKC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の被告設計図1を、同(二)認定のMMC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の原告設計図2に依拠してSSC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の被告設計図2を、それぞれ作成した(甲二、一六)。被告設計図1、2は、原告設計図1、2において記載されている矢印マークが記載されていないなど細部がわずかに異なるものの、各図の配置及び各図が原告設計図1、2と同一ということができる。

(3) 被告は、平成二年九月二二日、前記一2(四)認定のアングルの原告設計図4(D3-0036-70-6T)に依拠して被告設計図4(TO-1080)を、同(五)認定のブラケットの原告設計図5(D4-0027)に依拠して被告設計図5(S-0624)を、それぞれ作成した(甲一四、一六)。被告設計図4は原告設計図4と、被告設計図5は原告設計図5と、それぞれ寸法の数字の字体が異なるだけであり、全く同一ということができる。

(4) 被告は、平成二年九月二二日、原告の丸カバーの設計図(MTC-U14-900B)に依拠して、側面図における寸法の数値が三か所のみ僅かに異なるだけで、全く同一ということができる設計図(ST900B)を作成し、また、原告のケーブルカバーの設計図(MKC-906-1)に依拠して、これと全く同一ということができるケーブルカバーの設計図(SKR-1214EX)を作成した(甲一五)。

(5) 被告は、平成二年一〇月七日、原告のヒンジ用ピンの設計図(SPC5-016)と同一性があるということができるヒンジ用ピンの設計図(SP・1008)を作成した(甲四〇)。

(6) 被告は、平成二年一一月二〇日、サイドカバーの設計図(SOC-1200)(乙二六)を作成した上、山本木型製作所にサイドカバー(外用カバー、内用カバー各一面)の木型の製作を依頼し、同年一二月六日、その納品を受けた(乙三の1)。

右の被告設計図は、上段の左側と右側に外用カバーと内用カバーの正面図、底面図及び右側面図を配し、左側下段に外・内サイドカバー・ラップ部断面図を配したものであり、各正面図、底面図及び右側面図は、長方形の外面に両端を含め上下端に達しない左右各三本、合計六本(但し、内用カバー両端のリブは、外用カバー両端のリブより短い)並びに左右各二本の中間リブの間にハンドル及びフックを設けた形状を、外・内サイドカバー・ラップ部断面図は、外用カバーと内用カバーの両端の各リブ(内用カバー両端の各リブの半径Rは、外用カバー両端の各リブの半径Rよりやや小さい)の接合状態を、それぞれ外形線(直線、曲線)並びに寸法線、寸法補助線等及び各部位間の寸法・各円弧の半径Rの数字を用いて表現したものである。これを前記一2(三)認定のサイドカバーの原告設計図3(甲一六)と対比すると、外用カバーと内用カバーの各正面図、底面図及び右側面図、外・内サイドカバー・ラップリブ断面図(外・内サイドカバー・ラップ部断面図)の配置の仕方は異なるものの、各正面図、底面図及び右側面図そのものは、リブの相違や一部の寸法等を除き、よく似通っており、外・内サイドカバー・ラップリブ断面図(外・内サイドカバー・ラップ部断面図)は、全く同一といってよく、右被告設計図は、原告設計図3を少なくとも参考にして作成したものであることが明らかである。

被告は、平成三年九月二三日にも、原告のサイドカバーの設計図(MFC-63-721)と同一性があるということができるサイドカバーの設計図(SF-816A)を作成した(甲三〇)。

(7) 被告は、その後も、原告設計図に依拠してこれと同一性があると認められる設計図を作成し続けた。

(六) 被告は、また、原告在職中、営業用資料ないし打合せ資料として原告のコンベヤベルトカバーのカラーサンプル(長方形の台紙に合計一三色の小片を左側七個、右側六個の二列に貼付したもの)も一〇部程度所持していたところ、原告を退職するに当たりこれらを原告に返還することなく、右カラーサンプルから原告の会社名・住所・電話番号を印刷した下端部を切り取った上、余白に被告名(サンロジック)・住所・電話番号・FAX番号のゴム判を押捺して、被告製品の発注及び営業活動に使用した。被告は、平成二年一〇月には、新たに被告製品用のカラーサンプル(甲一〇五)を作製したが、平成三年七月六日にも、被告製品製造のために右のように改造した原告のカラーサンプルを新川レジン工業に持参しており(甲二)、しかも、右新たに作成したカラーサンプルも、原告のカラーサンプルの一三色中の一二色が同じで一色のみが異なりこれに他の一色を加えた一四色の小片を左右各七個の二列に貼付したものである。

(原告は、被告は前記のような原告設計図のコピー及びカラーサンプルだけでなく、原告の得意先名簿、仕入先名簿もコピーして持ち出した旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。)

(七) 被告は、平成二年九月、被告製品の見開き表裏四頁のパンフレット(甲六)を作成したが、そのうち、表紙の写真は、原告製品を設置した現場の写真を掲載したものであり、「SKC型コンベヤカバー」及び「SSC型コンベヤカバー」のベルト幅、長さ(有効・全長)、間口、高さ、フランジからの垂直の立ち上がりに続く小さな円弧と大きな円弧の各半径という各「カバーサイズ」の一覧表の数値は、原告設計図のコピーに基づいて記載したものであり、「コンベヤカバー取付け方式」の三種類(A型両開き式・B型脱着式・C型片開き式)を示す略図、取付部品の「アングル」、「Uクリップとプッシュナット」、「ブラケット」の図面は、原告のパンフレット(甲五の1)に掲載された略図、図面と同一のものである。

(八) 被告は、平成二年九月一三日に二〇万五四〇〇円、一五日に一三万六八〇〇円、一〇月一二日に四万八〇〇〇円を売り上げるなど、同年九月から一二月までの間に被告製品を販売して約三三〇万円の売上げを得、翌平成三年一年間には約五二四四万円相当の売上げを得(乙四七)、平成四年には約一億円の売上げを得た。被告の販売先は、その約二割が原告退職後に被告が新規に開拓した顧客である。

以上の事実が認められ、右認定に反する当事者双方の主張立証は、前掲各証拠に照らして採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  しかして、原告設計図がいずれも著作物に該当するとはいえず、したがって、被告が原告設計図に依拠してこれと同一性のある設計図を作成したとしても、著作権の侵害自体による不法行為は成立しないことは前示のとおりである。

また、原告は、原告設計図、カラーサンプルは原告の営業秘密に該当し、被告は原告設計図のコピー及びカラーサンプルそのものを持ち出してこれら原告の営業秘密を取得した旨主張し、原告設計図の保管庫の管理責任者は村田社長で、出図は村田社長、谷出仲祐及び被告の三名のみに限定し、他の従業員に対しては持出し厳禁を指示徹底していたし、図面保管庫の鍵二個は村田社長と熊本専務が一個ずつ保管するなどして、図面保管庫及び図面の持出しについては十分に管理してきたものであり、また、顧客に提出した図面は、例えば五部提出すれば、一部が返却用として発注先(原告)に返却され、残り四部が提出先の設計、工程、資材、検査の部門で保管されるのであるが、これらの承認図面については、秘密事項として取引基本契約書によって取引の双方当事者に守秘義務が課されていたと主張するが、本件全証拠によるも、承認図面について、秘密事項として取引基本契約書によって取引の双方当事者に守秘義務が課されていたとの事実は認められないし、原告が顧客に対し第三者に秘密にしておくように申し入れたとの事実も認められない。のみならず、原告製品は、特に複雑な構造を有するというものではなく、その形状、寸法等は、原告製品それ自体により容易に認識することができるものであるから、原告製品の形状、寸法等を忠実に表現したにすぎない原告設計図に表された技術情報は、原告製品自体によって明らかにされているということができ、原告製品が顧客に納入される際に顧客に特別の守秘義務が課されているとの事実を認めるに足りる証拠もない以上、公然知られたものといわなければならない。したがって、原告設計図は、秘密として管理されているとも、公然と知られていないとも認められないから、不正競争防止法二条四項所定の営業秘密に該当するということはできない。カラーサンプルについても、同様である。

しかしながら、右1認定の事実によれば、被告は、(1)昭和五一年三月に原告に入社して以来、一貫してFRP製コンベヤベルトカバー等の原告製品の製造及び金型の製作の発注、販売活動等の業務に従事し、退職直前は営業課長の職にあったところ、平成二年五月、原告を退職して自ら独立してFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売事業を営むことを決意するや、原告在職中で、しかも営業課長の職にありながら、退職後に営むべきコンベヤベルトカバーの製造販売事業のために、<1>平成二年五月末頃、原告の許諾を得ることなく、原告の下請先である田中化成工業(奈良県宇陀郡大宇陀町)に対し、通常の原告からの発注であるかのように装って、被告が被告製品製造のために使用するコンベヤベルトカバー(丸カバー)のマスター八面を注文し、そのように誤信した田中化成工業をして、原告が原告製品製造のために保管させていたモールドを使用してこれらを製作させ、同年七月一八日、ガソリン代等の出張費用は原告から支払を受けて田中化成工業に赴き、代金一五万円を支払い、同月三日、右のように田中化成工業に製作させたマスター八面を、原告出入りの運送業者である金田運送に依頼して運賃三万円は原告の負担で金山化成工業所(金沢市)の工場内に運び、更に金山化成工業所にも合計一〇数面のマスター及びモールドを製作させ、<2>同年七月一〇日、原告の協力工場である三木製作所に対し、コンベヤベルトカバーの取付用部品であるUクリップ三九五〇個の製造を依頼し、同年八月二三日、同社が丸晋工業に発注して製造させたUクリップを三木製作所に依頼して金山化成工業所に送らせ、四一一一個の納入を受けるなどし、村田社長に対しFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売事業を営む予定であることは告げることなく退職を申し出た同年七月二〇日頃からは、原告には五日間ほどしか出勤しないまま同年八月二〇日に退職し、(2)原告の許諾を得ることなく、原告が金山化成工業所に保管させていたマスター三面から、上カバーと下カバーを区別するための原告製品特有の上向き又は下向きの突設された矢印マークを削り取らせ、これから被告製品製造のためのモールドを製作させ、被告製品を製造させ、(3)原告を退職するに当たり、原告在職中に営業用資料ないし打合せ資料として用意していた原告設計図のコピーを原告に返還せず、また、FRP製品の担当者ないし営業課長としての地位を利用して改めて大量にコピーして持ち出し、原告退職後、製図業者に依頼して、<1>平成二年八月三〇日、Uクリップの原告設計図6(D3-0027-70S-8)、Uクリップ用チェイン付ストップピンの原告設計図7(SPU-907-2A)に依拠して、それぞれ全く同一ということができる被告設計図6(D3-0027-70)、被告設計図7(SPN-711)を作成し、<2>同年九月二二日、MLC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の原告設計図1、MMC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の原告設計図2に依拠して、それぞれ同一ということができるSKC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の被告設計図1、SSC型コンベヤベルトカバー(丸カバー)の被告設計図2を作成し、<3>同日、アングルの原告設計図4(D3-0036-70-6T)、ブラケットの原告設計図5(D4-0027)に依拠して、それぞれ全く同一ということができる被告設計図4(TO-1080)、被告設計図5(S-0624)を作成し、<4>同日、原告の丸カバーの設計図(MTC-U14-900B)、ケーブルカバーの設計図(MKC-906-1)に依拠して、それぞれ全く同一ということができる丸カバーの設計図(ST900B)、ケーブルカバーの設計図(SKR-1214EX)を作成し、<5>同年一〇月七日、原告のヒンジ用ピンの設計図(SPC5-016)と同一性があるということができるヒンジ用ピンの設計図(SP・1008)を作成し、<6>同年一一月二〇日、原告設計図3を参考にしてサイドカバーの設計図(SOC-1200)を作成した上、山本木型製作所にサイドカバー(外用カバー、内用カバー各一面)の木型の製作を依頼し、同年一二月六日その納品を受け、平成三年九月二三日にも、原告のサイドカバーの設計図(MFC-63-721)と同一性があるということができるサイドカバーの設計図(SF-816A)を作成し、<7>その後も、原告設計図に依拠してこれと同一性があると認められる設計図を作成し続けたというように、原告設計図のコピーに依拠してこれと全く同一ないし同一ということができる被告設計図を大量に作成するなどし、(4)また、原告を退職するに当たり、原告在職中営業用資料ないし打合せ資料として所持していた原告のコンベヤベルトカバーのカラーサンプル(長方形の台紙に合計一三色の小片を左側七個、右側六個の二列に貼付したもの)一〇部程度も原告に返還することなく、右カラーサンプルから原告の会社名・住所・電話番号を印刷した下端部を切り取った上、余白に被告名(サンロジック)・住所・電話番号・FAX番号のゴム判を押捺して、被告製品の発注及び営業活動に使用し、平成二年一〇月には新たに被告製品用のカラーサンプルを作製したものの、平成三年七月六日にも被告製品製造のために右のように改造した原告のカラーサンプルを新川レジン工業に持参しており、しかも、右新たに作成したカラーサンプルも、原告のカラーサンプルとほぼ同じ各色の小片を同じ形式で貼付したものであり、(5)被告が平成二年九月に作成した被告製品のパンフレットは、表紙の写真については、原告製品を設置した現場の写真を掲載したものであり、「SKC型コンベヤカバー」及び「SSC型コンベヤカバー」の「カバーサイズ」の一覧表の数値については、原告設計図のコピーに基づいて記載したものであり、「コンベヤカバー取付け方式」の三種類を示す略図、取付部品の「アングル」、「Uクリップとプッシュナット」、「ブラケット」の図面は、原告のパンフレットに掲載された略図、図面と同一のものであり、(6)その結果、被告は、早くも平成二年九月一三日に二〇万五四〇〇円、一五日に一三万六八〇〇円、一〇月一二日に四万八〇〇〇円を売り上げるなど、同年九月から一二月までの間に被告製品を販売して約三三〇万円の売上げを得、翌平成三年一年間には約五二四四万円相当の売上げを得、平成四年には約一億円の売上げを得た、というのである。

右(1)の<1>及び<2>の行為は、原告在職中に、しかも、原告のFRP製品の担当者ないし営業課長という地位にありながら、このことを利用して、原告の了解を得ることなく、一部は原告の費用負担で、退職後に営むべき原告と競業関係に立つコンベヤベルトカバーの製造販売事業の一部を行ったものであり、(2)の行為は、原告が金山化成工業所に保管させていたマスター三面の所有権を侵害する行為であり、(3)の行為は、たとえ著作物に該当せず、営業秘密にも当たらないとしても、一から作成するとすれば相当の時間と費用がかかると推認され、一定の財産的価値を有することが明らかな原告設計図のコピーを原告に返還せず、また、原告におけるFRP製品の担当者ないし営業課長という地位にあることを利用して改めて大量にコピーして持ち出し、これをほぼそっくりそのまま利用したものであり、(4)の行為は、退職に際して原告のカラーサンプルそのものを返還せず、社名等の記載を変更しただけでそのまま事業に利用したものであり、(5)の行為は、原告のパンフレットを部分的にそっくりそのまま利用するなどしたものであり、もって競業関係に立つ原告との競争上、不当に有利な地位に立ったものというべきであり、右被告の一連の行為は、被告が職業選択の自由を有することを考慮しても、社会通念上許容される正当な事業活動の範囲を逸脱し、公正な競争秩序を著しく破壊し、原告に不当に損害を被らせたものというべきであるから、民法七〇九条の不法行為を構成するものといわなければならない。

以上に反する被告の主張は、いずれも採用することができない。

したがって、被告は、右不法行為によって原告が被った損害を賠償すべき義務があるということになる。

三  争点3(被告に損害賠償義務があるとした場合に、原告に賠償すべき損害の額)について

1  被告は、前示のように、原告在職中から原告のFRP製品の担当者ないし営業課長という地位にあることを利用して被告製品製造のためのマスター及びモールドを製作させ、取付用部品であるUクリップを製造させ、原告を退職するに当たっては、原告設計図のコピーを返還せず、また改めて大量にコピーして持ち出し、カラーサンプル一〇部程度も返還せず、原告のパンフレットを部分的にそっくりそのまま利用するなどして、退職直後からFRP製コンベヤベルトカバーの製造販売の営業を始めることができたのであるから、被告が右のような不法行為をしていなければ、退職直後に営業を始めることはできなかったものと認められ、しかも、被告の販売先は、その約二割が原告退職後に被告が新規に開拓した顧客であり、換言すれば約八割は原告の顧客であるというのであるから、原告は被告の右不法行為により、得られたはずの売上げを得ることができず、ひいて得られたはずの利益を失ったことによる損害を被ったことは容易に推認することができる。

しかして、原告は、一般にコンベヤベルトカバーを製造、販売するには、設計図面・カタログ・カラーサンプルの作成、型類の製作、取付用部品の製造、取付図の作成、協力工場の獲得、取引先の開拓、その他ノウハウの取得が必要であり、営業を開始するまでに約三年間の期間を要すると主張するが、右営業を開始するまでに要する期間を直接立証する証拠はないところ、原告製品や被告製品は、それ自体複雑な構造を有するものではなく、被告は、FRP製品に関する技術を有し、原告において長年にわたり原告製品の製造及び金型の製作の発注、販売活動等の業務に従事してきたものであることを考慮すれば、より短い期間で足りるものと考えられ、甲第一八号証(袋禎治郎の平成五年八月二五日付陳述書)によれば、先行仮処分事件における大阪地方裁判所の審尋において、担当裁判官が、被告が一年間で総モデルチェンジをするという前提条件で和解を進めることを提案したのに対し、原告は、全面的にモデルチェンジをして成形型を用意するのに三か月もかからない、一年間は長すぎる旨陳述し、被告は、五年間を要する旨陳述したことが認められ、当事者双方の陳述は和解の端緒段階でのものであることを考慮してそれぞれ割り引いて受け取る必要があり、また、一から事業を始める場合は総モデルチェンジをする場合よりは期間がかかるものと考えられるから、以上のような事情を総合考慮すれば、もし被告が前記のような不法行為をしていなければ営業開始までには平成三年一二月三一日までの期間を要したものであり、その間に原告は右期間の被告の売上高のほぼ一割に相当する五〇〇万円の得られたはずの利益を失って同額の損害を被ったものと認めるのが相当というべきである(原告は、著作権法一一四条一項に基づく主張をし、平成二年及び平成三年に被告の得た純利益の額は〇円であるとするが、原告は全体として平成八年一〇月までに合計二三六九万円の損害を被ったとの主張をしており、要は前記のような被告の不法行為によって原告の被った損害の額を何円と評価するかの問題であるから、右の認定は弁論主義に反するものではない)。

2  前記二1(四)のとおり、被告は、原告の許諾を得ることなく、原告が金山化成工業所に保管させていたマスター三面(MT七五〇上下カバー用マスター各一面、MT九〇〇下カバー用マスター一面)から、上カバーと下カバーを区別するための原告製品特有の上向き又は下向きの突設された矢印マークを削り取らせたのであり、証拠(甲二〇、証人袋禎治郎)によれば、原告は、右各マスターを補修するため、原告主張のとおり合計三三万八〇〇〇円を支出し、同額の損害を被ったものと認められる。

3  原告は、被告の不法行為に対処するため、弁護士費用その他の裁判関係費用合計八二八万六〇八〇円の支出を余儀なくされ、同額の損害を被ったと主張するので、検討する。

(一) まず、原告は、金山化成工業所及び新川レジン工業に対する各仮処分申立てに関して、弁護士手数料、弁護士出張旅費手当、裁判用費用等、原告社員出張費、写真コピー代、調査費用を支出して損害を被ったと主張するが、右各仮処分申立ては、被告の本件不法行為を機縁としてされたものであることは窺われるものの、原告は、いかなる被保全権利及び保全の必要性に基づき、いかなる趣旨の仮処分を求めたかの主張立証がなく、右仮処分の申立てが被告の本件不法行為に対処するために必要かつ適切であったかどうか不明といわざるをえないから、右主張の損害は、被告の本件不法行為と相当因果関係にあるものとは認められない。

(二) 原告は、被告に対する先行仮処分事件の申立て及び申立却下決定に対する即時抗告に関して、弁護士手数料、調査費用、見解書作成費用、リバースエンジニアリング実験費、原告社員出張費、写真コピー代、挨拶状作成費、裁判用費用を支出して損害を被ったと主張する。

先行仮処分事件は、前記第二冒頭部分後段記載のとおり、原告が本件訴訟に先立ち被告を債務者として、平成五年法律第四七号による改正前の不正競争防止法一条三項柱書、一号又は四号に基づく営業秘密に係る不正競争行為の差止請求権及び民法七〇九条に基づく差止請求権を被保全権利として、被告製品の製造販売の差止めを求めるとともに、著作権法一一二条一項、二項に基づく差止請求権を被保全権利として、被告設計図1ないし7の複製の差止め及び廃棄を求めたものであるところ、大阪地方裁判所は原告の仮処分申立てをすべて却下したが、その即時抗告審である大阪高等裁判所は、不正競争防止法及び民法七〇九条に基づく仮処分申立てについては却下の原決定を維持したものの、著作権法に基づく仮処分申立てについては、却下の原決定を取り消し、これを認める決定をしたものである。

このように、原告の不正競争防止法及び民法七〇九条に基づく差止請求権を被保全権利とする被告製品の製造販売の差止めを求める仮処分は、即時抗告審においても認められなかったものであり(原告設計図及びカラーサンプルが営業秘密といえないことは前示のとおりであり、また民法七〇九条に基づく差止請求権は認められないというべきであるから、この点では当裁判所の判断と一致するものである)、また、著作権法に基づく差止め・廃棄請求については、当裁判所は、右即時抗告審の判断とは異なり、前記一説示のとおり原告設計図は著作物に該当するとはいえず、したがつて右請求は理由がないと判断するものであるから(先行仮処分事件における即時抗告審の判断に既判力がないことはいうまでもない)、結局、先行仮処分事件の申立て及び申立却下決定に対する即時抗告は、被告の本件不法行為に対処するために必要かつ適切であったとはいえないことになる。

したがって、前記原告主張の損害は、被告の本件不法行為と相当因果関係にあるものとは認められない(なお、その主張の損害のうち、先行仮処分事件における訴訟費用に該当するものの償還については、先行仮処分事件の訴訟費用の裁判に従って決すべきものである)。

(三) 原告は、本件訴訟に関して、弁護士手数料、印紙・切手代(一部即時抗告分を含む)、原告社員出張費、写真コピー代を支出して損害を被ったと主張する。

甲第二五号証(西メリ子及び袋禎治郎作成の「本件訴訟関係裁判費用明細」と題する平成五年九月六日付書面)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件訴訟の追行を弁護士である原告代理人に委任し、手数料として七九万円を支払ったことが認められるところ、本件事案の難易、認容額、その他諸般の事情を考慮し、本件不法行為と相当因果関係にある弁護士費用の損害は、五〇万円と認めるのが相当である。

しかし、印紙・切手代は、訴訟費用の裁判によってその負担者及び負担額が決められるべきものであって、これとは別に損害賠償として請求することはできず、原告社員出張費及び写真コピー代は、その具体的内容が必ずしも明らかでなく、本件不法行為と相当因果関係にあるものと認めるに足りる証拠はない。

4  以上によれば、原告は、被告の本件不法行為により前記1の五〇〇万円、2の三三万八〇〇〇円、3(三)の五〇万円の合計五八三万八〇〇〇円の損害を被ったものであり、被告は、これと同額を賠償すべき義務があるということになる。

したがって、不法行為に基づく原告の請求は、右五八三万八〇〇〇円及びこれに対する不法行為の後の日である平成五年六月一一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がないということになる。

第五  結論

よって、主文のとおり判決する(平成九年七月一日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 田中俊次 裁判官 小出啓子)

原告 設計図目録

1 原告製造販売のMLC型コンベヤベルトカバーの各設計図面(図番及び作成日付は別紙「原告設計図と被告設計図の対比表」の原告欄番号1ないし27記載のとおり)

2 原告製造販売のMMC型コンベヤベルトカバーの各設計図面(図番及び作成日付は前同表の原告欄番号28ないし54記載のとおり)

3 原告製造販売のサイドカバーの各設計図面

4 原告製造販売のアングルの設計図面(図番及び作成日付は前同表の原告欄番号55記載のとおり)

5 原告製造販売のブラケットの設計図面(図番及び作成日付は前同表の原告欄番号56記載のとおり)

6 原告製造販売のUクリップの設計図面(図番及び作成日付は前同表の原告欄番号57記載のとおり)

7 原告製造販売のUクリップ用チエイン付ストップピンの設計図面(図番及び作成日付は前同表の原告欄番号58記載のとおり)

被告設計図目録

1 被告製造販売のSKC型コンベヤベルトカバーの各設計図面(図番及び作成日付は別紙「原告設計図と被告設計図の対比表」の被告欄番号1ないし27記載のとおり)

2 被告製造販売のSSC型コンベヤベルトカバーの各設計図面(図番及び作成日付は前同表の被告欄番号28ないし54記載のとおり)

3 被告製造販売のサイドカバーの各設計図面(別紙図面サイドカバー記載のとおり)

4 被告製造販売のアングルの設計図面(図番及び作成日付は前同表の被告欄番号55記載のとおり)

5 被告製造販売のブラケットの設計図面(図番及び作成日付は前同表の被告欄番号56記載のとおり)

6 被告製造販売のUクリップの設計図面(図番及び作成日付は前同表の被告欄番号57記載のとおり)

7 被告製造販売のUクリップ用チエイン付ストップピンの設計図面(図番及び作成日付は前同表の被告欄番号58記載のとおり)

原告設計図と被告設計図の対比表

<省略>

サイドカバー

<省略>

被告設計図目録 8

丸カバー

1 MMC-500-C 51.9.1検図

2 MMC-900-A 51.9.1検図

3 MMC-1050-A 51.9.1検図

4 MMC-1400-C 51.9.1検図

5 MMC-1600-C N1-14-54 54.6.15検図

6 MLC-600-C 62.11.18検図

7 MLC-750-C 62.2.20検図

8 MLC-900-C 62.2.20検図

9 MLC-1050-C 61.1.21検図

10 MLC-1200-C 62.2.20検図

11 MLC-1400-A 61.2.13検図

12 MLC-1600-A 63.10.25検図

13 MT-600-C MTC-D-14-600-C 54.1.10検図

14 MT-750-C MTC-750-C 54.1.8検図

15 MT-900-A MTC-U-14-900-A 51.5.31検図

16 MT-1050-A MTC-1050-A 53.6.13検図

17 MT-1200-C MTC-507012-C-1 50.12.3検図

18 MT-1400-C MTC-507014-AC 50.12.3検図

被告設計図目録 9

丸カバー

1 ST-600-A 2.9.22検図

2 ST-600-B 2.9.22検図

3 ST-600-C 2.9.22検図

4 ST-750-A 2.9.22検図

5 ST-750-B 2.9.22検図

6 ST-750-C 2.9.22検図

7 ST-900-A 2.9.22検図

8 ST-900-B 2.9.22検図

9 ST-900-C 2.9.22検図

10 ST-1050-A 2.9.22検図

11 ST-1050-B 2.9.22検図

12 ST-1050-C 2.9.22検図

13 ST-1200-A 2.9.22検図

14 ST-1200-B 2.9.22検図

15 ST-1200-C 2.9.22検図

16 ST-1400-A 2.9.22検図

17 ST-1400-B 2.9.22検図

18 ST-1400-C 2.9.22検図

19 ST-1600-A 2.9.22検図

20 ST-1600-B 2.9.22検図

21 ST-1600-C 2.9.22検図

22 ST-1800-A 2.9.22検図

23 ST-1800-B 2.9.22検図

24 ST-1800-C 2.9.22検図

25 ST-2000-A 2.9.22検図

26 ST-2000-B 2.9.22検図

27 ST-2000-C 2.9.22検図

ケーブルラックカバー

28 ケーブルラックカバー SKR-1214-EX-1~5 2.9.22検図

特殊サイドカバー

29 1000H×1000L SF-816A 下部フック式 3.9.23検図

30 1185H×1000L 下部フック式

被告設計図目録 12

丸カバー

1 SSC-1200-A 下カバー H.5.3.20検図

2 SKC-1200-B 上カバー H.5.3.20検図

3 SKC-1200-B 下カバー H.5.3.20検図

4 SFC-1200-B H.4.7.13検図

5 SPC-0204 H.2.12.20検図

特殊サイドカバー

6 SF-816AB H.3.9.23検図

7 SF-816AC H.3.9.23検図

部品

8 Uクリップ D3-0070A H.2.10.7検図

被告設計図目録 13

部品

1 ヒンジ用ピン(別紙図面のとおり) H.6.11.11入手

材質66ナイロン

<省略>

3 R1、R2比較

<省略>

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